*SIDE*セツカ

「なあ、ユカラ。マグノリアはやっぱり残した方がいいんじゃないか？」

急いで装備の点検をしながら、同じく準備をしているユカラに話しかける。

ユカラとマグノリアもついてくる、と言ったもののある程度戦闘ができるユカラはともかく、マグノリアは正直戦闘力はほぼ皆無だ。

確かに、でかいウサギになる事はできてもそれ以上でもそれ以下でもない。

「…僕も、ちょっとそう思うけど、マグノリアがどうしても行きたいんだってさ。」

なるほど、ノリや流れじゃなかったのか。

「はい、どうしても…どうしても、私は行かなければいけない気がするんです。…理由はわからないんですけど。」

マグノリアの眼を正面から見て、レイヤ先生が許可した理由がわかった。

これは、絶対に引かない人間の目だ。

「わかった…まあ、ユカラもマグノリアも俺が守ってやるから安心しろよ。」

「…セツカさんって、サクラさんの護衛なんだからサクラさんもね？あと、兄上もよろしく。」

「よろしくお願いします！」

…ごもっとも。

皆の護衛だけじゃない。

今回の件…フィーの居場所にも繋がるような気がして。

俺は気合いを入れ直した。


*SIDE*レイヤ・センドウ

「全員、準備はできたな？」

10分後、全員の支度が終わったかどうかを確認する。

「おう、はよ行きましょ！レイヤ先生！何処に走って行けばいいんですか！」

何時もとは違い、白い武術道着のようなものに身を包んだ道産子が急かす。

というか、走っていく気かこの馬鹿は。


「馬鹿ものが。走っていくわけがないだろ。俺様がなんのために魔法陣を用意したと思っているんだ。」

転移と追尾の魔術式を組み込んだ魔法陣。

錬金術の道具を使い、魔力を最小限しか使っていないにも関わらず身体が悲鳴をあげている。

…サクラが心配そうにこちらを見ているが、今は仕方あるまい。


「…全員、この魔法陣に乗れ。発動すれば、対象の居る目的地付近に自動で転送される。…だが、本来はある程度場所のイメージが出来るのだが、まったくイメージが出来ない。何処に飛ばされるかは、正直見当もつかん。」

そこまで危険な場所でないのは、一応別の手段で確認はしたもののどんな場所かまでのイメージは出来なかった。初めての事だ。

「それでも、灘さんを助けるためには…」

「まあ、行くしかないわけだがな。…よし、時間が惜しい。行くぞ？」

そして、全員が魔法陣に乗ったのを確認して魔法陣を発動した。






「…何処だここは…森の中か？」

魔法陣の先にあったのは、木々に囲まれた森。

だが、上を見上げると空は無く、世界が歪んだ色をしている。

一先ず、周りを見渡すと全員、無事に転移してきているようだ。

「あ…あっ…」

すると、マグノリアが何かを見つけたのか眼を見開いて小さく声を上げた


全員がそこに視線を集中する。

そこには、ひと際大きな…天を突くほど巨大な木の下で佇んでいる…紫の長い髪の女性。


「…わかってはいましたけれど。来てしまいましたね。」


「おり…ふぃあ様…」


オリフィア。


それは、マグノリアが世話になった恩人であるとよく話していた人物。

ここにその人物がいるということは。

多分、兵庫を遅い、その魂を抜きだした相手の可能性がかなり高い。


そして、俺様も…この気配は嫌になるほど知っていた。