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レイヤ・センドウ

山奥で隠遁していた錬金術師。
ユカラとマグノリアの兄でサクラの師匠。
とある事情であと1年持つかもたないかの命。

最近、挙動不審気味なようだ。
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サクラとのデート場所を考えて数日。

このあたりで、ハロウィンのお祭りをやるという情報を得てそこに連れだす事に決めた。
だが、いざデートへ誘うとなると、何か緊張してしまい…。

サクラの部屋の前で数往復うろうろした後、サクラの部屋の扉をノックする。

はぁい、と声がした後に扉が開き、サクラが顔を出す。

「あ、レイヤ先生、どうされました？？」

「う、うむ。今日の夜にだな、この辺りでハロウィンのお祭りをやるようなのだ。その、どうだ、一緒に。」

呼吸を整えた後、一呼吸で言いきった。よし、噛まずに言えたぞ、俺様えらいな。
サクラの反応を見ると、嬉しそうに笑っている。

「ハロウィンのお祭り…いいですね、とても行きたいです！」

うむ、掴みは成功だ。
では、夜に迎えに…と、言おうと思ったがそういえばハロウィンは仮装するものだったな。

「そうか、よかった。では、夜にまた迎えに来る…ああ、だが仮装するものも買いに行かねばならないから少し早くでるか。」

「わぁ、仮装も楽しみです。前はレイヤ先生がフランケンシュタインであたしが狼になったんですよね。今年は何にしましょう、えへへ。」

そう、去年は特に何の興味もなく言われるがままに仮装をした。
よく思いだすと、サクラの狼はなかなか可愛らしかった気がする。
…もっとよく見ておけばよかった。

「そうだな。狼のサクラも似合ってはいたぞ、うむ。だが、出来れば違うものも見たいな。…今から出られるか？」

「はい、ちょうど調合の区切りも良いところだったので大丈夫です。」

「わかった、では入口の所で待っているから用意が出来たら来てくれ。」

そのままサクラを待つために宿の入口へと歩を進める。
今のところはデートとしては成功しているのではないか！？と、思ったがそもそもまだ誘ったばかりだった。
少し落ち付け、俺様。

などと考えているうちに、準備を済ませたサクラがやってきた。

「お待たせしました〜」

そのままサクラと一緒に宿の外へ出る。

「サクラは、今回はどんな格好をしてみたいのだ？」

道すがら、サクラがどんな格好をしたいのか聞いてみる。

「どんな格好…ですか…うーん…
前回がちょっとワイルド系だったので綺麗とか可愛いとかしてみたいかもですね。」

可愛い系か…ふと、昔、本で読んだ精霊の事を思い出した。

「ふむ。綺麗系か可愛い系か…妖精か魔女になるのだろうか？うむ、悪くないな。…蔦だけ纏ってアルラウネ等も…」

そこまで考えて、裸に蔦だけ纏っているサクラを想像してしまい顔が熱くなるのがわかった。

「いやいやいやいやいやいやいや、何を想像しているのだ俺様は！？」

「アルラウネ？？可愛い感じですか？どんなのでしょう？」

知らないようでキョトンと首をかしげながらこちらに聞いてくるサクラ。聞こえてしまったものはしょうがないので、一応説明することにした。

「いや、うむ。植物の精霊なのだが、だいたいが美女や美少女として描かれているな。植物を身体に纏っていたりする事が多い。」

「へぇ…精霊なら幻想的ですねー。それもちょっと考えておきますね！」

実際、ほとんど蔦を纏っているだけの姿なのだが…見てみたくはあるが。
…というか、本音だけで言うと見たいが。

「そ、そうか。サクラがそう言うならば、それもいいかもしれんな…うむ。」

そこまで話して、そういえばデートは手を繋ぐもの！と最初のサクラとのデートで兵庫が言っていたのを思い出したので、そっとサクラと手を繋いで見る。
…小さくて柔らかい手だ。

一瞬だけビクっとサクラの手が震えたが、そのあとにサクラは握り返して来たので俺様もそっと握り返す。

「そ、それではこの近くに祭り用の服を貸し出している店があるのでそこに行ってみるか。」

このお祭り用に何時もはただの服を出している所が、仮装服の貸し出しを毎年しているらしい。
さすがに、この機会ぐらいでしか使わないものだろうからレンタルする者が多いのだろう。

「レンタルですかー、お得でいいですねっ。この時期しか着れないものですしね。」

「そうだな、さすがに年がら年中は着てまわらんからな。…よし、店に着いたぞ。」

着いた店は、ハロウィン用に店の内装も弄ってあるのかいかにも！な店だった。

「わ、お店の雰囲気からしてもうハロウィン一色って感じですねぇ。ワクワクしてきちゃいました！」

かぼちゃお化けのぬいぐるみなども売っているな…ユカラ達への御土産に買って行ってやろうか？

「うむ。かぼちゃまみれだ。ユカラに１個買って帰ってやったら喜ぶか…マグノリアの分も合わせて２つだな。…それよりもまず服を選ばないとな。…女性服の方が圧倒的に多いな。」

比率的には7対3ぐらいで女性の服が多い。まあ、男が着飾っても面白く無いというのはあるのかもしれんが…。

「魔女や女海賊なんかが定番って感じみたいですね〜。」

「ふむ。女海賊はワイルド系だから今回は除外か…となると、魔女か。精霊系も無くはないがやはり、多少自前になるか。」

「あ、そうだ、さっきのアルラウネというものはないんでしょうか？」

さっきの会話をきっちり覚えていたサクラがアルラウネの衣装を探す為に店内をきょろきょろしている。
…ちなみに、俺様はきっちり目ざとく見つけてあるのだが。
やはりというか、予想していた通り、こう、薄い。
何が薄いかというと、まあ色々薄い。
スケスケのワンピースに蔦を絡ませるだけなのだからそりゃ薄い。

「…いや、無くは無いのだが、そのだな。」

確かに、サクラがこれを着ているのを見て見たいかと言われれば見てみたい。
だが、他の奴に見せるのは癪に障る。
しかも、祭りと言えば大勢が見ているではないか。
そんなものは却下だ却下！

「…見てみたくはあるが、あまり人前で着せるものではないな、と思ってだな。ま、魔女にするか？」

笑顔でこちらを向いてるサクラに別の衣装を勧める事にした。

「えっ？ど、どういうことでしょう？あ、はい…レイヤ先生が言うなら、魔女にしますね。」

少し困惑しているようだが、そこまで頓着していたわけではないようなので素直に従ってくれた。

「うむ。…しかし、見てみたいが他の相手に見せたくない場合はどこで着るのだこんな衣装。」

これを考案した相手にぶつぶつと呟く。

「レイヤ先生レイヤ先生、魔女の衣装はこの辺りに固まっている様で…レイヤ先生？」

「…とりあえず、部屋で着て貰う為に買うのはありか？って、何て言って着て貰う気だ俺様…ん？な、なんだ？」

サクラがあの、魔女の衣装…と言いながら売り場を指さしている。
どうやら、呼ばれているの気付かずに物思いに耽ってしまっていたらしい。
ふ、不覚だ…。

「あ、す、すまん。すこし考え事をしててだな…よし、売り場を見に行くぞ。すぐ行くぞ。」

誤魔化すように、サクラを連れて魔女の衣装売場へと赴く。
サクラはさして気にしていないのか「はい」と言って素直についてきた。

「ええと…色は黒、紫、橙…橙はハロウィンのカボチャを意識してるのでしょうねぇ。可愛いで考えれば橙がいいのかもしれませんね。」

「ふむ。そうだな。橙が良いのではないか？サクラのピンクの髪にもよく映えそうだ。」

魔女、というには可愛らしい衣装な気がするがやはりそこはハロウィン仕様なのだろう。

「シルエットもカボチャを意識したふんわりした感じのが多い様ですし、可愛い感じにぴったりですね！これは試着できたりはするのでしょうか〜？」

「うむ。試着はできるようだぞ。…折角だし試着してこればどうだ？俺様もその間になにか自分のものを見ているとしよう。」

「はい。では試着できたら呼びますので…見ていただけますか？」

見ないわけがない。力強くサクラに頷いた。

「うむ、勿論だ。任せろ。」

「じゃあ行ってきますね！」

そう言うと、サクラは衣装を持ったまま衣装室へと試着へ行った。
さて、その間俺様は暇なので自分の服を見ておくか。

「さて、俺様は何を着るか…あまり不思議な物を着てもしょうがないな。狼男か吸血鬼か…吸血鬼だと去年のアホ毛と被るから遠慮しよう。とすると、やはり狼男か…？」

…そういえば、いまのうちにユカラとマグノリアへの御土産とアルラウネの衣装を購入しておこう。
…サクラに着て貰えるかどうかはともかく、念の為だ念の為。

会計を済ませて戻ってくるとサクラも試着が終わったらしく試着室からぴょこっと顔だけ出して来た。

「レイヤ先生ー、着替えましたぁ。」

「お、着替え終わったのか。どんな感じだ？」

近づいて行くと、サクラが試着室のカーテンを開けて、全身を見せてくれた。
少し恥ずかしそうにミニスカの魔女衣装を身にまとったサクラ。
うむ、良い。

「サイズはちょうどいいみたいです。…どうでしょうか？」

少しの間、そのサクラに見惚れていたが、はっ、と正気に帰る。

「…あ、よく似合っているぞ？サクラの雰囲気にちょうどあっている。…やっぱり、ピンクの髪に映えるな。」

「本当ですか？良かったです…えへへ…」

「うむ。では、サクラはそれで良いな。俺様は狼男にしようと思うのだがどうだろうか？」

「狼男ですかっ、きっととても格好いいと思います！レイヤ先生は黒髪ですし銀色の耳や衣装が似合いそうですよね。」

銀色の耳というと、去年サクラが着ていたやつだな。
うむ、確かに悪い感じがするな。

「そうか、カッコいいか。…銀色ということは、去年サクラが着ていたようなものでいいか。」

「そうですね。あ、一緒に選んでもいいですか？」

「勿論だ。…というか、サクラが選んでくれても良いぞ？俺様はそういうのにはあまり詳しくはないからな。」

「わかりました、じゃあ選ばせていただきますっ。…と、その前にこれ脱がないとですね。少しだけ待ってて下さいね。」

さすがに、試着したまま服を選ぶわけにもいかないのでサクラは試着室へ戻って着替えてくる。
少し残念だが、後でゆっくり見られるので問題ないだろう。

「お待たせしてすみませんっ。」

「いや、全然待ってはいないから大丈夫だ。それでは、よろしく頼む。」

サクラと並んで、狼男の衣装売場へと移動する。

「…腰みのやベルトがついてるのもあるんですね〜。あ、こっちのやつは下がレザーパンツになっててワイルドさが強調されてますね。どれもいいなぁ…。」

はっきり言って、いままで着たことが無い衣装ばっかりなので少しひるむ。
だ、だがサクラが良いと言っているならきっといいのだろう。

「れ、レザーパンツか…こういう物は着たことがないからな…似合うかどうかわからんぞ？」

「大丈夫です！レイヤ先生は細身ですらっとしてますから、絶対格好いいですよ！」

サクラが力強く言い切るので、自分でもそんな気がしてくる。

「そ、そうか。サクラがそこまで言うならそれでも構わんかもしれんな。…さすがに試着はするがな。」

「じゃあこれをちょっと着てみてもらえますか？」

サクラにレザーパンツの衣装を渡されたのでそれを持って試着室へ移動する。

「…これは着方はこれであっているのか？むむ・・・」

試行錯誤しながら、なんとか着衣して試着室のカーテンを開ける

「こ、こうか？」

馴染みがなさすぎ違和感があるが、サクラは嬉しそうな笑顔を見せる

「わぁ！思った通りすごく似合います！…格好良い。それにしちゃいましょうっ。」

…サクラが似合っているというなら、それでいいか。

「そ、そうか。では、これにするか。では、祭りまでその辺をぶらぶらすることにするか」

サクラと一緒に祭りがはじまるまで買った服を着てその辺りをぶらぶら喋ったりしながら散歩することにした。


To be continued