(新年あけましておめでとうございます、
今年もよろしくお願いします。
時間があいても時間が無い……
今回は、
小芝居とその後に前回の続きとなります。)

「新年あけまして——」
『おめでとうございます』
「本年度もよろしくお願いね。」
クスリと笑って新年の挨拶を終え、
パーティの仲間達をみる。
「うん、よろしくね。」
「よろしくウサ。」
その言葉に素直に返してくるアルネスさんとペルチェさんだが——
「(もぐもぐもぐもぐ)」
約一名……エモさんは既に、
用意された御節を一人貪っていた。
「……我慢できなかったのね？」
その様子をみて発した私の言葉に、
一つ頷く。
既に御節の中身は半分以上が消滅していた。
予定よりたくさん用意したし、
出している分以外でも用意したのだけど、
このペースを考えると、
それでもどうにも足りそうに無い。
足りない分は、
お雑煮とかで補うしかないかしら……
と苦笑を浮かべる。
「ねぇ。エモさんがほとんど食べてるけど、
　私達が食べる分あるよね？」
そうしてエモさんをみていると、
恐る恐る私にご飯の心配をしてきいてきたので、
私は笑顔を浮かべ——
「私の分だけあるわよ。」
そう答えたら——
「ええええええええええええ！
　ちょ、ちょっと待って！
　今日のご飯って……」
「御節ね。
　あら、大変。
　アルネスさんご飯抜きかしら？」
「いやいや！
　待って待って！
　流石にご飯抜ききついから！」
「まぁ、ダイエットと思って。」
「いやいやいやいやいやいやいや！
　絶食ってどんな拷問！？
　あ、でも自分で……」
「何いってるの？
　貴女にはちゃんと仕事してもらうわよ？
　きちんとお願いしたでしょう？」
「デスヨネー。
　あるぇー。
　どうしよう……
　えっと他に何か。」
「無いわね。」
そんな私の答えに、
どんどんと表情が絶望へと染まっていく。
そんな時——
「みつきー？」
エモさんが私に声をかけてくる。
「おかわりあるー？」
それは催促する言葉。
まぁ、当然の如く、
彼女が食べ始めると猛烈な勢いで食べ物が消費されていく。
そして、
あった量で満足するはずもなく、
もっととねだってくるのだ。
そんなエモさんの言葉に、
私は笑顔で——
「あるわよ。
　今からお雑煮入れるついでに、
　用意しておいた別の御節だすから、
　待っててくれる？」
「わかったー。
　まってるー。」
ゆっくり待つように告げた。
それを聞いたアルネスさんは、愕然とした表情で、
こちらを見て——
「あれ、他にご飯ないんじゃ……」
「お正月料理以外はないわよ？
　ちなみに、
　余分なものがある事は伏せておいたけど。
　余裕があるとはいっても、
　エモさんが全力で食べたら、
　どんなけあっても足りないもの。」
「……わざと？」
「勿論。」
「デスヨネー。
　お、おのれー……
　この恨みはらさで……」
「本気でご飯抜くわよ。」
「すみませんでしたーーーーー！」
文句をいってきたが、
力技で黙らせる。
食べ物関連を私が取り仕切っている以上、
食べ物に関することで私にたてついても、
損をするのはアルネスさんなのである。
まぁ、もっとも……
基本的にからかうだけなので、
実際にぬいたりはよほどでないとしないつもりではあるが。
「さて。と。」
まぁ、
このままアルネスさんをからかい続けるのも一興ではあるものの、
きちんと新しい御節の用意と、
お雑煮の用意をすませるとしよう。
あまりまたせると、
エモさんがかわいそうだしね。
——きっと、今年もいい年になるだろう。
そんな予感がふとよぎった。

＊　＊　＊　＊　＊

——翌日、
今度は素直に授業にでる予定である。
なので、朝一番に学校へと行き、
自分の席へと座る。
どこが自分の席なのかは、
既に把握している。
なので速やかに席について静かに待つ。
やがて、他の生徒達がやってきたので、
御機嫌ようと挨拶をかわしながら、
時が過ぎるのを待っていると、
ちらちらとこちらへと視線が飛んでくる感じがする。
それはそうだろう。
私は昨日きていなかった。
空席だったその場所に座ってる女がいるのだから、
気になっても仕方が無い事だろう。
まぁ、それでも気にせず待っていると、
やがて担任の教師がやってきて、
教師もまた私が来ていることに気づいたらしい。
昼休みに職員室に来るようにつげ、
一日の授業が始まった。
授業の間も休み時間の間も、
特に何事もなく過ぎていく。
誰かから話しかけられることもなかったが、
まぁ、
あいにくこのクラスには自分から厄介事に関わろうとする人間がいないか、
私という人間にどう対応すればいいのか分からないのだろう。
ちなみに、
始業式で私の変わりに代役となった子もこのクラスにいるが、
彼女にいたってはチラチラとこちらを見ながら、
話しかけてほしそうに小動物のような目でみてくるが、
あえて無視する事にした。
恐らくは、
後でこれ以上我慢できないという限界がきた辺りで話しかけてくるだろうので、
完全に放置。
という訳で、
何事も、何の障害も無く、
昼休みになると同時に職員室へと移動した。
「何の御用でしょうか？」
担任の教師のいる場所へと移動し、
何か用なのかを問う。
当然、何故呼ばれたのかは分かっている。
それでも何事も無かったかのように聞くのは、
性分である。
「何の御用ってお前なぁ……」
そんな私の反応に、
分かってんだろう？
とばかりにあきれた声を出す教師に、
私は小首をかしげ——
「何かありましたでしょうか？」
あくまでもしらを切る私。
そんな私の態度に教師は一つ息を吐いて——
「新入生代表が、入学式当日に連絡もなく当日欠席、
　しかも保護者に連絡をいれたら、
　好きにさせてと来た。
　更にいえば学校にはきてたことは分かってるんだ。
　完全なサボりとか何考えてるんだ。
　せっかく頭がいいんだし、
　もっと真面目に出来ないか？」
説教を始める教師に向かって、
私はにっこりと笑顔を浮かべ、
きっぱりと即座に断言する。
「出来ません。」
と。
元より私は私の好きなように生き、
好きなように動く。
ゆえに元より聞く気はないし、
この学校において私は猫をかぶる気は一切ない。
この学校に何かあるとかではなく、
たまには不真面目な学園生活も送ってみたいのである。
まぁ、いつもが真面目かと聞かれれば、
首を傾げざるはえないが、
それでも最低限はきちんとしていた自信はある。
更にいえば不真面目といっても、
学校には来るし、
授業には基本的には真面目に受けるだけ良しとしてもらいたい。
「……なんでそこで断言するかな。
　はぁ、
　ここは本来一つ怒るべきなんだろうけどなぁ……」
「私は怒られても別に構いませんが。」
「全く堪えない上に、
　俺が疲れるだけで、
　更にいえば逆にそれ利用されて酷い目にあうような気がしてな。
　知り合いにお前のようなタイプが……
　いや、どうでもいいな。
　で、これからもサボったりはするのか？」
「必要があれば、といえば満足でしょうか？」
「……正直にありがとう。
　で。
　当然——」
「あらためるつもりは全くありませんが。」
「……」
「……」
率直過ぎる返答を返す私に、
絶句する教師。
「あー、もういい。
　なるべく授業は真面目に受けて、
　厄介事はなるべく起こすな。
　見た目も喋り方も優等生で、
　実際成績もいいのに、
　なんでそんな性格なんだか……」
「私に聞かれても困りますよ。
　——私は私ですから。」
「はいはい。分かった分かった。
　じゃあ、違うことを聞くぞ。
　何故サボった。
　いや、
　代表が嫌といってたのは知っているが、
　かといって完全に入学式に欠席した以上何か理由があるんだろ。」
「そうですね。
　桜が綺麗だったからでしょうか？」
「なめてんのか？」
「いいえ、いたって真面目ですが。」
「……」
「……」
そ知らぬ顔で正直に告げる私に、
話にならないというのが分かったのか、
半眼で私をみてくる教師。
「学校は勉強しに——」
「入学式は勉強とは関係ありませんよね。」
「社会勉強だ。」
「上手い事切り替えしましたね。」
「教師を試すな。
　はぁ……やっぱり完全に分かった上でか。
　じゃあ反省文かくか？」
「お断りします。
　書いても先生のおっしゃる事であれば、
　やりますが、
　私自身は全く反省しませんが。」
「堂々というな！？
　はぁ……
　全く。
　今日のところはもう戻っていいぞ。
　次からはなるべくないようにな。」
「善処します。
　それでは失礼いたしました。」
そんな私の態度に、
これ以上はらちがあかないから、
こちらかせ完全な非を認める状況ができてから、
改めて説教とでも思ってるのだろう、
話を切り上げて頭を下げている私にいいからいけとばかりに促す。
それを見てにっこり微笑んで職員室を出て行く私。
私が出て行った職員室から、
いいんですか？だの、
問題児のクラスで大変ですね。だの。
生ぬるいだの聞こえてくるが、
私には関係ない事かと、
教室に戻ると——
一瞬教室内が静まって、
教室内の視線が私へと集まり、
再び何事もなかったかのようにざわめきを取り戻した。
あまりにも何事もなかったかのように戻ってきた私に驚いたのだろうか？
さして珍しいものではないでしょうにとは思うが、
気にしても仕方ないので、
お弁当を広げ昼食をとることにした。
昼休みの時間も有限。
呼び出しもあったので、
ぼやぼやしては昼ごはん抜きになってしまう。
別に抜いても問題はないのだが、
気分的な問題である。
そうして、一人ご飯を食べ始めると、
今日朝からずっとこちらをチラチラ見ていた子が、
私の方へとやってきて声をかけてきた。
「あ、あのー……」
「何かしら？」
遠慮がちに声をかける彼女に気にした風もなく昼食をつづけながら、
返答する私に、
「す、すみません……
　その、あの……
　入学式で代表変わってこれっていって、
　そのまま来なかった方ですよ……ね？
　じょ、冗談じゃなかったんですか……？
　というか、その、先生に呼ばれてたみたいだけど、
　大丈夫だった……？」
「…ああ、代理お願いした子ね。
　その節はどうもありがとう。
　おかげでゆっくりできたわ。
　呼ばれたけど特に何も無かったわよ。
　休んだ事情聞かれただけよ。」
「そ、そっか。
　それなら良かった、えっと——」
「私の名前は伊賦夜魅月。
　よろしくね。」
つっかえつっかえ、
どう反応して、
どうして接していいものやら分からない様子の彼女に、
にっこりと笑って自己紹介をして挨拶することで、
逃げ場をなくした。
これからも何かあれば彼女を頼ることになりそうだし、
逃がすつもりはない。
私につかまったのが不幸だと思ってもらうとしよう。
とはいっても、
別段彼女に対して悪さをするつもりではないから、
不幸とまでいうと語弊はあるが。
「あ、はい、
　わ、私は、佐々木咲良です。
　ええっと……
　その……」
「これからも色々頼むかもしれないわ。
　ああ、大丈夫、
　無理な事までやれとかはいわないわよ。
　その代わり何かあったら頼ってくれてもいいわ。
　——ま、同じクラスの人間だもの。
　仲良くやりましょう？」
「あ、は、はい。
　よ、よろしくお願いします、魅月さん。
　えと……力になれることがあれば頑張ります。」
「良い返事ね。
　……はい。」
素直な子は嫌いじゃない。
そっと卵焼きを一口大に箸で切ってつまみあげ、
咲良さんの口の中へと運ぶ。
「んっ！？
　……あ、美味しい……」
「良かった。
　上手に出来たからきっと気に入ると思ってたわ。
　ま、ささやかながら代理をしてくれたお礼かしらね？
　これぐらいで足りたとは思わないけど。」
「あ、……ありがとうございます！」
「お礼をいうのはこちらのほうだと思うけどね。」
「——その、
　怖くてとっつき難い人なのかなと思ってたんですけど……
　優しいんですね。」
「——優しくはないし、
　怖くてとっつき難いのは否定しないわ。
　けど、ま、
　無闇に敵を作っても楽しくないじゃない？
　作るなら敵よりお友達の方がいいわ。」
「！
　それも、そうですね。
　あ、じゃあ、
　よかったら私と仲良くしてくださいませんか？
　折角の縁ですし。」
「貴女がそれでいいのなら、ね。
　よろしく咲良さん。」
「はいっ！よろしく魅月さん！」
あまりにも無邪気で可愛らしい咲良さんの様子に、
少し苦笑を浮かべながら、
握手を交わす。
彼女はもう少し人を疑ってもいいと思う。
だけど……
まぁ、そのおかげで彼女に目をつけたわけだから、
仕方ないといえば仕方ないのだが。
ま、もし目の届く範囲で何かあれば、
護ってやればいいかと思いつつ、
彼女と楽しく談笑し、
昼休みが過ぎてゆく。
今回の学校でも楽しくやっていけそうね。

メモにさらさらと絵を描きます。ナマズっぽいの。