エンブリオの蒐集にも慣れてきた。我が使役するエンブリオには全て我に魔力を還元する制御を施している。やり方はゴアのそれに変わりない。道化の次は吸血鬼と呼ばれるかもしれぬが、それもまぁ悪くはない。この世界の魔術師どもの生き血を一滴残らず絞り尽くす日がいずれ訪れるであろう。

支配に於いて最もその深刻さを与えるものは対象との距離である。物理的な接近が支配への影響力を増大させるため、最大の支配はその身体を奪い去ることを意味する。
支配に於いて最も効率的な方法は対象に支配を行わせることである。支配した対象が更なる支配下の階級を生み出す構造を作り出すことだ。
我が支配能力は対象一人の精神に直接潜り込み、精神の設定を変化させることによって為される。それは即ち、設定を完了させなければ同時支配は不可能であることを示す。この問題は複数人による攻撃に対する脆弱性として顕現するが、人間一人の精神支配に数秒もかからない実力によって度外視されてきた。しかし今はその力も失われている。エンブリオを支配するのでさえも骨折りである。
確実で強力な支配を効率良く行うことでこの弱点を補う必要がある。そのためには強力な支配者を完全支配することが理想に近い。一人支配してしまえば盾が盾を呼ぶ状況を作り出すことが可能になる、そのような者を探す。ここ暫く行っている魔術師探索の目的がそれである。
そして、ようやく目星をつけたのだ。

ダンッ！