■ Day 68 ： 理解出来なくてごめんなさい

　連れられて訪れた名も知らない街は、とても賑やかだった。明るく、お祭りムードと言ってよさそーな雰囲気は、初めてやって来たアタシにとってとても居心地のいーものだった。鼻をくすぐる美味しそうな香りに気付き、何を食べよーかな、逆にタケノコ出したら喜ばれるかな、なんて考えつつ、その香りを追うよーに進んでいった先に知っている人——自称一揆の参謀のルリアンナさんを発見した。
　けれど、ルリアンナさんの漂わせるオーラはとてもじゃないけど恐ろしーものだった。そんでもって、こんな平和的な街の中でも、なぜか戦う羽目になってしまったのだ……

　ただ『脅かそうと思った』と語るルリアンナさんの驚異的な戦闘能力に、アタシは呆然とした。天蓋庭園で出てきた敵やエンブリオたちとは比べ物にならないほどの威力で、アタシ含む挑んでいった仲間を蹴散らす。『勝てなければ通さないよ』、と口に出さずとも笑顔だけで伝えてくる赤毛のお姉さんを前に逃げ出し、チュンちゃんを引き連れてもう一度挑もーとした、のだが。
　目の前に少し日に焼けた肌が眩しい、アタシと同じ髪と眼の色をした男の子が立っていた。

　アタシが一揆の傍らずっと探し続けていた人物——2つ下の弟、カツマだった。

　カツマは右手に封筒を握りしめていた。アタシは言われるがまま、少しくしゃくしゃになったそれを受け取る。

　本当のところ、アタシもカツマの口から謝罪の言葉が聞きたかった。けどあんなことをしたのには、あいつなりの考えがあるだろーし、それより傷一つない姿で目の前に現れたのを見ただけで、怒りの感情がすっと安心した、というものににすり替わってしまったよーな気がした。だからこれ以上弟を責める気にはならなかったのだ。

　抵抗せず、全てを受け入れるかのように話すカツマ。

　言われて自分のポニーテールを引っ張ってみる。一揆衆に加わってからかなり日にちが経ったけど、毛先の綺麗な青はまだ抜け落ちてはいなかった。
　カツマは呆れたように溜め息を付いて、こう言い放った。

　ポロッと記憶が抜け落ちる。
　その言葉を聞いて、アタシは前にユニコーンと契約しよう、と躍起になったことを思い出した。実際は、戦いに負けて契約できなかったんだけど……いや、そもそも負けた戦いがあった、ということ自体思い出せないんだった。もしかしたらそれもカツマが言うアタシの悪い特徴なのかもしれない。

　そう叫んでも、カツマは足を止めなかった。

　逆ギレしたかのよーに言い放って、全速力で街の中を駆けていくだけだった。

　優しく返事をしてくれたハナちゃんに感謝しながら封筒を開き、路地の植え込みに寄りかかりながらそれを読み始めた。

[>アサミはため息を1つついた。

[>それから自分の荷物を漁って、薄い赤紫色をした何かを雀に渡した。

ブリギットはスズメの頭をなでている！