あるところに、ニウノハラというむらがありました。
そこはエンブリオのちからをつかって、さくもつにみずをやったり
くらいひびがつづいたときも、ひかりのちからでにっこうのかわりをたのんだりと
どくとくなのうほうでゆうめいなむらでした。

そんなニウノハラに、まいとしおおくのひとがおとずれます。
ぞくにいう『エンブリオのうほう』を、まなぶためです。

そしてそこに、サヤコというおんなのひとが、パパといっしょにすんでいました。
サヤコはむらいちばんのびじょといわれるほど、きれいなかおをしていました。

*

あるひ、サヤコのいえにおとこのひとがやってきました。
かれはオージアスとなのると、ぜひとものうほうをまなびたいといって
サヤコのパパにあたまをさげました。

「ここはタケノコをそだてているいえだ。
おまえのこきょうにやまがなけりゃ、はたけしごとをしてるいえに
せわになったほうがいいんじゃないか？」

そうサヤコのパパがいったにもかかわらず、オージアスは
「このいえじゃないとだめなんです」と、つよくいいました。
するとそのねついがつたわったのか、サヤコのパパはにっこりとほほえみ
「それならいっぱいおしえてやろう」と、オージアスをみとめました。

こうして、サヤコとオージアスはいっしょにのうさぎょうをすることになりました。
するとサヤコはオージアスの、きれいなみどりいろのひとみと
きんにくしつなからだに、ほれてしまいました。
オージアスのほうも、サヤコのくろいかみとしろいはだが
とてもきれいだな、とかんじていました。

*

それから、なんかげつかたった、あるひ。
オージアスはサヤコのしんしつにはいり、ふたりっきりになると
すう、といきをすって、こうはなしました。

「いまから、ぼくのひみつを、あかします」

そういうやいなや、オージアスはサヤコのてをぎゅっとにぎると
じっと、じーっとかのじょをみつめました。

そうしてかれがまたいきをすうと、こんどはからだから
みどりいろのもやもやとした、オーラのようなものがでてきました。
サヤコはめをまるくしながら、なんだかこわいとおもいながら
オージアスをみつめていました。

するとどうでしょう。
みどりいろのもやもやがきえたかとおもうと
オージアスのすがたが、かいぶつといえるようなすがたになっていました。

「ごめんなさい、これがぼくのほんとうのすがたなんです。
あなたのことがきになって、エンブリオだということをかくして
よそからきたひとのふりをして、ちかづいてしまいました」

オージアスのめのしろいぶぶんはくろくなり、あたまにはちいさなつのが。
そして、せなかにはおおきなつばさがはえ、にんげんとはいえないすがたになっていました。

「デ、デビル？」

サヤコはしんじられない、といったひょうじょうでめのまえのあいてをみつめました。
ですがオージアスのひとみがきらり、とひかったかとおもうと、つぎのしゅんかん
サヤコのひょうじょうはとろんとした、きもちよさそうなものにかわりました。

「ううん、いいの。わたしはあなたのせいかくにほれたから。
だからにんげんじゃなくても、わたしはあなたをあいしてる。
たとえエンブリオとにんげんがけっこんするなんて、といわれても……
わたしはこのきもちをかえることはないわ」

そのことばをきいて、オージアスはみどりいろのめをさらにかがやかせました。
そしてサヤコをそっとだきしめ、ちいさくほくそえみました。

「サヤコ。にんげんもエンブリオも、おなじいきものだろう？」

*

そのご、ふたりはけっこんし、アサミというおんなのこと、カツマというおとこのこがうまれました。
ちちおやのかみのいろと、ははおやのめのいろをついだふたりは、すくすくとそだちましたが
りょうしんはエンブリオとのハーフであるということを、いっさいつげませんでした。










FLAG
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