昔々、ある山の麓に社が一つありました。
その社には、一人の少女が住んでいました。
少女は、氷で出来ていました。
山の神様の呪いを受け、身体を氷へと変えられてしまったのです。
呪いのために死ぬことも出来ず、また、山から離れることもできず
少女は、少女の姿のままで何年も生きていました。

ある日、近くの村に住む一人の少年が社に訪れました。
村では、『社には近付かないように』と言い伝えられていましたが、好奇心に負け
或いは逆に好奇心を掻き立てられ、ついつい中へ入ってしまったのです。

少年は、少女を見て大層驚きました。そして、近付き触れようとしました。
すると、少女は冷風を巻き起こし、少年を吹き飛ばしました。
吹き飛ばされた少年は壁に当たり、面食らった表情で少女を見ます。
「ごめんなさい、ですが、私に触れるとあなたは凍りついてしまいます。
だから、早くここから立ち去ってください。」
少年は、言われるままに、社を後にしました。

明くる日、社に再び少年がやって来ました。
少女は無視して寝ている振りをしていました。

次の日も少年はやって来ました。
次の次の日もやってきました。

少年は一方的に、楽しかった話を語り続けます。

それからも、毎日のように少年はやってきて、話をして行きました。
次第に少女も心を開き、心を通じ合わせていきました。

そうして、少女にとって楽しい日が続いていたある日。
少年の到来を待ちわびていると、空へと黒い煙が伸びている様子が見えました。

少女は、居てもたっても居られなくなり、煙の方向へ駆け出しました。
氷の道を作りながら、必死に村の方へと駆けていきます。

村へ着くと、そこは火の海でした。
途中、何人かの刃物を持った荒くれ者に襲われましたが、氷の刃を突き刺し、殺しました。
体が溶けるのも構わず、村人に悲鳴を上げられるのにも構わず、少女は少年を探します。

少年の名を叫んでいると、くぐもった声で自分の名を呼ぶ声が聞こえました。
声のした方に行くと、血塗れの少年が息も絶え絶えに横になっていました。
少女は少年を抱きかかえようとしますが、その手を止めました。
何故なら、触れたら凍りつかせてしまうからです。

みるみるうちに、少年からは血の気が失せていきます。
それを見て少女は神に祈り、火に身を投じました。
「どうか神様、此の身はどうなっても構いません。彼をお救いください。」

祈りは聞き届けられ、少女は雨となり、村へ降り注ぎました。
雨は、火を消し、また、生きた人々の傷を癒していきました。

少年が目を覚ますと、火は完全に消え、傷ひとつ無い自分の体がありました。
そして、ハッと何かに気づいた様子を見せると、少女の居た社へと駆けていきました。
しかし、そこに少女は居ません。

少年は涙しました。

「泣かないで。」
ふと、声が聞こえた気がしました。

少年は一言「ありがとう。」
そう言って社を後にしましたとさ。


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-その呪いが、私達に受け継がれているものだから。

-詳しいことはわからないけれど、浴びた水が媒体になったらしい。
祖先は、その村の人なのかもしれない。少年と結婚した人がいたのかもしれない。

-わからないんだ。

-そうだね、ただ、ここに呪いはちゃんと残ってる。

-そのうちわかる時が来るよ。

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ぐーぱーぐーぱー

ひと伸び。

ギガティスがけたたましく騒いでいる。

視線を向けると、あるものをビシッと指さした。