悪霊の群体に主人格として与えた存在、それがサブペルソナだった。
彼女は根が真面目で誠実であり、マナもまた安定化のためにその性格に期待していた。

しかし。

そのあまりにも「常識的な人格」は、悪霊の群体という「異常」の中では必ずしも良い事ではなかった。
他の人格を抑える事にも心労が嵩んだ。
自分の存在意義に苦悩する時もあった。
何より、生真面目なサブペルソナは自分の歪な容貌と在り方にコンプレックスがあるらしく、マナとの会話でも遠慮する有り様だった。

たまりゆくストレスを懸念したマナは、打開策を求めて再び「悪霊の群体」の中を覗いた。
サブペルソナの補佐に適した思念はないか。彼女のストレスを緩和できるような素体はないか。
具体的なビジョンもない、闇の中でもがくような求めの末に見つけたのは、弱々しい小さな思念だった。

それは赤子の思念。
いや赤子ですらない。生まれる直前で母体ごと殺されてしまった胎児の、たましい。


「ひょっとしたら」


よぎった想いに身を任せ、マナはその魂を掬いあげた。