わずかかぶりをふる。

久し振りに聞く声にぱっと顔を明るくし。

穏やかにどこかにいる少女の意識に語りかけ、話に耳を傾ける。

ジュリのいう身体とはいったい誰のだろう？
覚えていないことを思い出すかも……ということは、樹里の身体がこの世界のどこかにあるのだろうか。
違う何かの器ならばいい。
でももしジュリが樹里の身体に入るのだとしたら、それはジュリと樹里の意識が混ざり合うってことだろうか。


それとも—————




ジュリの話に少しだけ眉を顰めて拳をぎゅっと握り締める。




不安がないといえば嘘になる。
が、ジュリの身体が失われた今、少しでも可能性があるならそれに賭けるしかない。
何より一番不安なのは自分ではなく、ジュリ自身なのだろうから。



ふっと息を吐くと握っていた拳を開き。
そのまま自身が作った畑の片隅へと向かう。

話しながら両膝を大地につけると素手で土を掘り返し始める。
そして懐から大切にしまっておいたジュリの花びらを取り出してそっと口付け。

掘った穴へと花びらを置き、土を被せていく上から涙がぽたぽたと滴り落ちて大地を濡らす。
それでも少年の顔は笑顔のままで。