俺は結局この偏屈な子どもについていく形になった。すなわち船守を辞め、本腰を入れて参戦することを決意した。リイスティオスは川を離れて地を歩き始めた俺を見捨てることはしなかった。彼女彼も案外食えるものさえ得られればよいのかもしれない。何にしろ自分の預かり知らぬところだ。
　近づくにつれ戦闘は激化するだろう。少なくともこのちびは何かと手傷を負いやすい戦闘においては使える。戦いで命を落とす確率は減るだろう……餓死はするかもしれないが。
　それにしても先日の兵士達、気でも狂っていたのか？　なにか大層な呼び名で自分を呼んでいたような気がするが。忘れてしまった。

　雨の降る予感がする。

150412

前線から離れているとはいえ、既に出会う人大半がネクター奪還で息巻く者と、それを防ごうとする者だけであった。それらに交渉を邪魔され撃退を果たしたのちも、少年は変わらずととん、と小さく回ったり、腕を引き延ばし、また引き寄せしならせている。寝転んでいる貴方を差し置いて、小舟は浮き沈みする。

貴方の言葉を聞くと、少年はぱっと顔を綻ばせ、腕を開いたりとじたり、或いは文字通り、飛び上がって喜んだ。かと思えば、思い出したかのように悪びれて苦笑して、爪先で地面に落書きした。

僕はフリードリヒ、というなり近寄って、半ば寝転んでいる貴方と握手をしようとするだろう。

と、胸に手をあてて深々とお辞儀した。