鳥とも人とも言えない腕が翼になっているその人物は、大雨の最中に空から雨と共に頭上から降って来た。

それに気付いたシェリィが慌ててその体を抱きとめて、２人が取っている安い宿に運び入れてから数時間。

ようやっと目を覚ました人物とシェリィの視線が交わると、その人物の瞳は、故郷では見慣れているが、異世界ではそうそう見ない異色の瞳……アメジストとシトリンの色をしているのに、何処か親近感と……もう１つ何かを思い出しかける……が、問題の人物の様子の方が気になって、警戒されないよう微笑みつつ声をかける。

「気がついたようだね。体の状態はどうだい？」

ベッドで半身を起こしたに相手に状況説明を求められ、そのままの事実を告げる。
そしてここはメルンテーゼで大きな騒動が起きているその土地の一箇所で、２人でそこへ探索へ向かうつもりだったのだのが、道中で空から降って来た人物がずぶぬれだったのもあり、一度宿まで戻ってきているのだと。

「まぁまぁお話ばかりでは疲れてしまいますでしょう？　これでも飲んであったまってくださいな」
「！　レフィ様、気が利かなくてすみません……」
「いいのよシェリィ、貴方はあまりこういった嗜好品に興味はないようですしね」

ベッドの上に居るその人物に、差し出されたのは温かいミルクティだった。

が、ふと２人して思い出す。
その人物の手は翼になっていて、カップを受け取れるのだろうかという疑問を。

しかしかけられた言葉に２人揃って一瞬固まる事になる。

「色々手間をかけたようですまぬのぅ。ところで、異界の神族と見受けるが…かつてお世話になった方ににてますな……あの方は、結局あれからチラとも姿を現してはくれなかったよ」
「な……」
「あらまぁ……」

レフィの方の反応は呑気なものであったが、揃って少々困った顔になっている。

「レフィ様、ゲートの変身術、有効ですよね」
「当然ですわ、あそこを通れば自動的にちゃんと術がかかるようになってますのよ」
「じゃぁどうしてこの人は私達の正体が……あ」

シェリィは思い切り自分が正体をバラしてしまった事に気付いて、レフィも小さく噴出す。

「シェリィったら……本当に嘘やごまかしが苦手ですわね。えぇ、そちらの手に翼持つ方、私達は背に光の翼を持つ、異界より来訪した神族の一族ですわ」

開き直ったのか何か思う所でもあるのかあっさりとそれを認めたレフィに続き、シェリィはこう告げる。

「レフィ様はその中でも一番上に座する方、同じ神族でも端くれみたいな私とは違いますけどね」
「それで手に翼持つ方、よろしければ情報交換をいたしませんこと？　今この騒動に参加するために来られたのか、それとも来られたばかりなのか。改めて私（わたくし）の名前はレフィナード、と申しますのよ。レフィとお呼び下さいな」
「私はシェルシェーリィことシェリィだ。……アンタを見てると何かを思い出しそうなんだが……」

名乗りを終えた２人は、相手の反応を待つ事にした。

■3224さんをお借りしております

（鞘から長剣を抜き放つと綺麗に構えを取って）

（緩やかに仕込み杖を長剣の形に変形させて構える）

（穏やかに微笑つつ仕込み杖を元の杖に戻す）