“シェリィより再三嘆願のあった異世界派遣、メルンテーゼへの訪問について全面的に私（わたくし）レフィナードが責を負います、いらっしゃいなシェリィ。貴方を待っている人が居ますわよ”


その言葉に駄目元でも城の中が居心地が悪くて、何度も訪れていた場所に居たシェリィは弾かれたように顔を上げる。


「“長”……どうしてまた急に？」


再三の嘆願を弾かれていたのに、急に許可が下りるとなると不審に思うのも当然だろう。


“ふふっ、実は私（わたくし）も無許可なのですよ”
「……は？　先だっては許可を取ったと……」
“そういわなければ納得しないでしょう？　三古老は認めてくださいませんでしたから、たまには私だってそういうわがままを押し通したくな……”


その言葉を聴いた途端、シェリィの背中に光の翼が現れる。


「何やってんですか“長”！！　力ほとんど割けないでしょうに無許可！？　今から護衛に向かいます、そういう名目でいいですね！？」
“あらあらそんなに焦らなくても大丈夫ですわよ、貴方が下さったメモにあった少年剣士さんと時々一緒してもらってますし……”
「話は後です、後！！」


そう告げると、この城の唯一の出入り口になる扉に手をかけて開く。
どことも分からない光景が広がるそこは“異世界間通路”の一箇所。ここから数多の異世界へと通じている。

迷う事なくシェリィはそこを潜り、門たる扉をしっかり閉めると飛び立った。
己の名の一部にもなった、かの世界——メルンテーゼへ。

（猛スピードでやってきた女剣士が、地面にひざをついて礼をしてから、金の髪の小柄な女性のように見える存在と、水の気をまとう少年の前に立つ）

（小さく呪文を唱えると、シェリィの腕と肩辺りにしゃらりと鎖のようなものが出現する。その様子に一言礼を言ってから今度は傍らの翡翠の瞳の少年に）

（緩やかに仕込み杖を長剣の形に変形させて構える）