私のたちの戦いは、私たちの知らないところで終わっていた。
これで故郷の村も元通りになるんだろう。私は、これからそこへ帰るんだ。
私の村。私の家、家族。私はそこへ帰ったら、元の私に戻るのかな。

　私は、強かった。お兄ちゃんや、みんなの前では。
それは本当の強さだったのか、そうだともそうじゃないともいえると思う。
そんなことじゃなくて、もっと大事なことに気が付いたのは、この旅の途中。
私は、強いと同時に、弱かった。本当は。
そのことを、お兄ちゃんやソフィさんは気づいていたんだと思う。

　私たちは突然、あっという間に二人きりの家族になった。
お父さんのことはよく覚えてない。お母さんのことはよく、覚えてる。
お兄ちゃんはもともと大人しかったけど、お母さんがいなくなってからすっかり弱ったように見えた。
ソフィさんは自分が力不足だったせいでお兄ちゃんや私を傷つけてしまったと言ってたけど、お兄ちゃんが弱くなったのがそのせいなのかは、わからない。
　弱くなったお兄ちゃんとは違って、私は意外にも元気だった。
空元気かもしれないし、お兄ちゃんを元気づけたかったのかもしれない。あるいは周りの人を心配させたくなかったせいかもしれないし、単に新たな楽しみをたくさん見つけた時期だったからなのかも。
きっと、その全てが、明るく活発な強い私を作る材料になったと思う。
過程はどうあれ、そうやって私たちは強さと弱さの役割をはっきりと分けた、脆いバランスで家族の形を保っていくことになった。
私が村を離れる、ほんの少し前まで、ずっと。

　今、これから家に帰って、私はお兄ちゃんにまずなんて言うんだろう。
一緒に暮らしてた家族なのに、再会の時の光景を思い浮かべることができない。どんな顔して、なんて言えばいいのかわからない。
泣いてしまうかな、殴ってみようか。どれもピンと来なくてむず痒い。
お世話になった仲間たちのことや、たくさん増えたエンブリオの友達、ちゃんと全部話せるかどうかわからない。そんなことが、どうしてかとても不安になった。
明日は仲間ともお別れだ。深く目を閉じて、不安を心の隅に押しやって眠りについた。

　私たちの戦いは、私たちの知らないところで終わった。
きっと元の場所に帰ってきた私は、元の私たちに戻らない。

特に意味もなく数回の素振りをして、仲間たちのほうへ向き直る。

口元のリボンを外し、にこりと笑う。

アシルが右手でパチンと指を鳴らせば三人の小指に可愛らしい赤いリボンが現れる。
リボンの結び目には、それぞれの髪色のストーンが付けられていた。

僕らが、一緒にいた証に。

遠くのほうから、いつか見た少女が小走りで走ってくる。
が、服装のせいなのか本人の機動力の問題なのか、ずいぶんと遅い。

そこまで言うと、服装の乱れに気づいたのか、スカートをぱんぱんと払う。
そしてそのまま、帽子が落ちない程度の角度で、お辞儀をしてみせた。

食べれるのだろうか

　
/w50/はい、これ