砂地で出会った小さな龍と契約し、力を行使する。
エンブリオとの契約は力を認めさせた上で「食う」事がアルヴィンにとっての契約になる。
この方法は私がメルンテーゼに到着して間もない頃に出会ったデビルが提案したものだ。
曰く「最も肉体の負担が少ない」とか。
私は嫌悪したが、確かにその方法は違和感なくアルヴィンの物になった。
恐らくは当たり前だからだろう。人喰いだった頃の当たり前。
それに慣れてしまいそうになる私が怖い。それでも契約をしなければ生き残れないのは理解していた。
元の世界と違うはずの言語をアルヴィンは理解できなかったが私は理解できた。
この事からアルヴィンはメルンテーゼとの親和性が低く、私はこの世界におけるエンブリオと同じ存在であった事から親和性が高い。
そのために理解度が高いのだと考察した。したかった。私という存在を強く持つために。
その考えの甘さを、この世界に来てからちょうど一週間立つ草原で知った。
小さな龍の力を行使した時、体の中のアルヴィンの意識が目覚める感覚がした。
もっと血を得ろ、もっと肉を喰らえ、無限となれ。
ああ、あいつを殺せてはいなかったのだ。眠っていたあいつは、龍の火によって目覚めた。

どう見ても理不尽な怒り方である。

モクラはただ、相手を見つめている……