15になれば独り立ち。

掟に従って里を出て数日。
注意が散漫してたのが悪かったのだろう、大きな山犬に追い掛け回されていた。
気付けば、眼下に広がるのは大森林。
ふっと体が浮いたと思えば耳元では風が吹き荒び、森が近づく。

そうして、私は———



どぼん。叩きつけられる衝撃で目を覚ます。
まとわりつく水、本能的な恐怖にただ必死にばたつき、もがき、這い出た。
大きくせき込み、そこでやっと苦しさを感じる。次いで違和感。

体にへばりつく服が気持ち悪い。のではなく、水を吸い重くなったはずの服はそれほど重さを感じない。
周りを見渡すと、目の前にはさっき見た大森林———本当に？
あんな木は見たことがない。あの実も知らない。私が知らないだけ？
後には湖。私が落ちた湖には違いないけど、落ちる時に湖なんて見えただろうか？
得も知れぬ不安がどっと押し寄せる。と、声が聞こえた。

「やー、派手に落ちたねー」

誰？どこ？声は面白そうにしながら、目の前に姿を現した。

そう、きらきら光って、透明な羽で、言葉を喋る———

「…むし？」

ちっがーう、なんて〝それ″は騒いでる。
混乱する頭で謝り、なんとかなだめた〝それ″は「フェアリー」だと言った。
フェアリーは、私は突然宙に現れ、湖に落ちたという。
またこの場所は〝王城″の近くの〝護りの森″だとも言った。

「なんで落ちてきたの？」

そんなの、私だって知らない…

俯き黙り込む私にフェアリーはいくつか問い掛け、ぽつぽつと私も返す。

そのうちいくつかのことが分かった。
曰く、私は異世界から来ただろうこと。
この世界の状況、世界を越えて「イッキ」の参加者が集まっている。
〝王城前″に行けば何かしらの情報も得られ、異世界から来たなら一揆に参加するのが一番無難だろう、と。


そうして。

「じゃ、そのネクターを渡しなさい！これで契約完了よ。」

情報も集めなきゃいけないんだし、王城に行くわよぉー！


知らない世界で最初に出会った〝それ″は親身になってくれた。
そのお蔭でなんとか一歩踏み出すことも出来そうだ。

これからどうなるのか———

ちらつく不安を振り切るように、私はフェアリーと王城を目指した。