深夜、仲間たちが寝静まったくらいの時間。
私は周りの仲間たちを起こさないように気をつけながら、そうっと起きあがると少し離れたところに移動した。
いつも身につけているペンダントの紐を手に巻き付けて、大きく振るようにして呼び出すのは、二匹のエンブリオ。
つい最近、戦闘後に仲間になったヴィーヴルと鳳凰だ。

『……こんな夜更けにどうした、主よ』
「貴方たちに名前をつけようと思いまして」
『……名前？』

不思議そうな顔をしたヴィーヴルと鳳凰に頷いてみせる。
以前仲間になったグラスパペットには、もう既に冬青という名前を与えた。
この二匹もついてくることになったのなら、名前をつけて他のエンブリオと区別がつくようにしておきたい。
少し早口に二匹に説明すると、ヴィーヴルが静かに頷いた。

『そういうことなら。良い名前、期待してるぜ？』
「……ええ。では、早速」

ゆっくりと手を動かし、ヴィーヴルを指差す。
額に赤い血のような宝石が埋め込まれた巨大な翼竜の姿をした彼を見上げ、一言。

「血玉随」
『……なんか言いにくい名前だな。まあいいけどよ』

俺の宝石からとったんだろう？
ヴィーヴルの一言に頷いて、彼の首を軽く撫でる。
次に鳳凰に目をやると、金色に輝く瞳と目が合った。

『次は私か』
「ええ。貴方は死火という名前を考えました」
『……死を永遠に続く大火災に例えた言葉、か。まあいい』

燃えさかる巨大な鳥は目を細めた後、やれやれというように緩く首を振る。
その様子に少しだけ安心して、浅く息をついてから私は二匹を真っ直ぐに見つめた。

「……では、改めてよろしくお願いしますね。二匹とも」