この世界に来てから、12日目。
戦いの後、いつものように眠っていた私の耳に聞こえたのは、何かが動く気配と喋る気配だった。
最初は時風と槿花が話しているのかと思ったが、何かが違うような感じがし、耳を澄ませてみた。

「……ってわけで、お願いしてもいい？」
「うん、……それくらいなら、私にもできるし……」
「すまぬ、しかし助かる」

時風の声、槿花の声、そして聞き覚えのない誰かの声。
強力な魔法を使う仲間の声でも、自分を拾った青年の声でもない——全く知らない誰かの声。
その声が聞こえた後、片腕に人の指が触れる感覚がし、私は飛び起きると同時に自分の手の中に愛用している双剣の片割れである「日蝕」を呼び出し、それを相手に突きつけた。

「……一体、何者ですか」
「わ、ちょ、ちょっと玉藻、剣しまって！！」

慌てる時風のすぐ隣には、驚いた顔で両手を小さく上げている見慣れない少女の姿があった。