戦闘開始早々に私は金髪の男に向かって大技を放ち一気に片をつけようとします。
しかし大技を受けた当の本人は何も無かったかの様にケロッとしています。

すぐに終わると思っていた私の目録が見事に外れて内心焦る私ですが、
ここは冷静さを保って攻性魔術がダメなら妨害魔術を使って暫く様子を見ます。

私の行動が終わり、続いてアラヤちゃんの連続魔術が炸裂！
しかしアラヤちゃんの攻撃も私の時と同じく、金髪の男に届く前に掻き消されてしまいました。

隣のアラヤちゃんと共に頭を悩ませながら様子を見ていると
大きな掛け声と共に戦いに巻き込んだ黒髪の男が攻撃を仕掛けていきます。

あの攻撃も掻き消されるのだろうと見ていると、
何故か黒髪の男の攻撃だけは掻き消される事も無く全て金髪の男に命中していました。

頭に浮かぶ時計の音を気にしながらどういう仕組みなのだろうと考えていると
アラヤちゃんはどうやらあの仕組みの謎に気付いたみたいです。

アラヤちゃんが魔力を集束した刀で直接斬り込みに駆け出し一閃、二閃と斬っていきます。
するとその攻撃は掻き消される事も無く命中していきます。

アラヤちゃんの行動で私は相手の仕組みの種にやっと気付きます。
どうやらあの金髪の男には『他者による一定量の負傷・ダメージを吸収・再生して何も無かった事にする』という固有能力をお持ちの様でした。

しかしその種が解った所で、私にはアラヤちゃんの様に上手に魔力・魔術操作ができる訳でもないので
攻めはアラヤちゃんに任せて私はその隣でチマチマと金髪の男を凍らせていく事にしました。

というのも最初に放った魔術の効果による凍結化はそのまま受けていた事を思い出したからです。
きっとあの固有能力は直接的なダメージのみを掻き消すだけで、状態異常を引き起こす効果自体までは防ぎきれない様です。

状態異常を防ぎきれないのなら話は早いです。どんな固有能力を持っていた所で相手は人間。
生物にとって体温とは生命を維持する為に大事な物。その体温をじわじわと奪っていけば最終的に勝つのは私達。

カチカチと頭の上に浮かぶ時計の音なんて気にせずに、私は氷霊と共にドンドンと金髪の男の身体を凍らせていきます。
アラヤちゃんも私の思惑に気付いて、オマケといわんばかりの状態異常を追加した連撃を浴びせていきます。

・・・暫くの奮闘の末。金髪の男は膝を着いて倒れ込み動かなくなりました。

勝利のＶサインをしながら勝利の喜びを表します。
このまま凍え死なれても怖いので倒れた金髪の男をしっかり介抱した後に、私とアラヤちゃんは森のある方へ足を歩みだします。

　＊　＊　＊

途中まで一緒だった黒髪の男と別れて、私とアラヤちゃんの二人は現れた森とは別の道を歩いてました。
アラヤちゃんが現れた森から罠の可能性を感じるという事で相談した結果こうなりました。

しかし歩いた先に着いたのは森でした。
密集した木々や長く伸びた草によって明暗のコントラストが現れて独特な森の雰囲気を出しています。

そんな事を思いつつ木々の隙間を抜けながら進んでいると
隣にいるアラヤちゃんが何かを言おうとしていましたが敵の気配に気付いて言葉を切ります。

森の茂みから現れたのは巨蛇1匹に、熊2匹…熊？

つぶらな瞳に白と黒のツートンカラーの毛の大きな熊を見た私はその可愛さに胸キュンしながら眺めています。
もちろん警戒は解かずに武器は構えながらですけど。

そんな私の様子にか、それとも目の前の敵に向かってなのか溜息をつきながら術式を展開するアラヤちゃん。

少し倒すのは惜しいけど襲ってくるなら仕方が無いです。これも自己防衛の為、正当防衛です。
術式を展開していつでも戦える状態にします。