三体のキエメ達に大量の氷の刃を飛ばして攻撃を与えようとする私ですが、攻撃が当ったと思った瞬間。
氷の刃が霧散して魔力の光子となってキエメ達に吸収されていきます。

どうやらあのキエメ達と私の魔力との相性が最悪に悪いようです。
私の氷の魔力を吸って更に強く元気になるキエメ達は私達の方を見て楽しそうに笑っています。

脇目からチラリと隣に居るアラヤちゃんの方に目を向けます。
アラヤちゃんの表情はいつも通りの冷静な顔で相手を見てます。
でも決定打が出せなく、私の攻撃が当てにならない事もあって、少し焦っている感じにも見えました。

このままでは押し負けると思った私は、ここで隣で奮闘するアラヤちゃんに声を掛けます。

私は一度ここから逃げる事を告げながらアラヤちゃんの返答も聞かずに
手を握ってそのまま一つ前の安全地帯を目指して脱兎の如く逃げ出しました。


　＊　＊


息を切らせながら私達二人は安全地帯を目指して必死に走っていきます。
時折、後ろを振り向いて追手が来ていないかを確認します・・・どうやら追手は来ていないようです。

後方の安全も確認したので、走る足を緩めてアラヤちゃんの様子を見ます。

アラヤちゃんは私の握ってる手をじぃっと見ています。
そして私の視線に気付いたのか、ほんの少しだけ頬を赤くしてそっぽを向いちゃいます。

そんなアラヤちゃんの様子を見て、今まで見せなかったアラヤちゃんの一面が見れて思わずくすりと笑みが出てしまいます。

笑われたと思ったアラヤちゃんが少しむすーっとした顔で私の方を見ています。
今まで澄まし顔だったり無表情な事が多かったアラヤちゃんなので、こうやって感情を見せてくれるのが嬉しいです。

笑みを浮べながら私は今回の失態の件をアラヤちゃんへ謝りながら、この前の誤射はこれでお相子と告げます。

アラヤちゃんは私に誤射の事を言われて、内心やっぱり気にしていたみたいで暫く気まずそうな顔をしてました。
でも笑みを向けて返答を待つ私に、一つ溜息をつきながら「分かった」と答えてくれました。

その返事に私は更に笑顔になってアラヤちゃんの握る手をぎゅっと強めると、
アラヤちゃんは照れ臭いのか少し顔を赤くしながら再びそっぽを向いてしまいます。

今回の失態には反省しつつも、こうしてアラヤちゃんと仲直り？できたのでそれだけはあの魔物達に感謝しておこうと思います。


　＊　＊　＊


安全地帯に無事戻れた私達二人は、のんびりと休憩を取ったりご飯を食べたりして戦いの疲れを癒してます。

仲直りしたあの後からアラヤちゃんがいつもに益してよく話しかけてきたり、一緒にご飯のお手伝いをしてくれたりしました。
前よりもアラヤちゃんが私に少し心を開いてくれて仲良くなれた感じがしてとても嬉しかったです。

休息を取って体力も気力も充実した私達は安全地帯から離れて
あの魔術が効かない魔物に遇わない様に気をつけながら再び先への道を進んでいきます。

流石に同じ事を二度も起こすのは年上のお姉さんとしての威厳として許せません。
なので細心の注意を払いながら私は足を進めていきます。

そしてアラヤちゃんはというと、いつもながら無表情・・・だけど口元が少しだけ笑っていてどうやら機嫌は良さそうです。
楽しそうなアラヤちゃんを見て私も楽しくなってきて、農場に居た頃お姉さんに教えてもらった歌を鼻で歌いながら歩きます。
鼻歌を歌う私をアラヤちゃんが最初はきょとんとした顔で見てましたがその内私の歌に合わせる様に鼻歌を歌ってました。

二人で楽しく道中を進んでいくと、何か白い物体が道の真ん中に見えます。
遠目で確認するとどうやらその白い物体は真っ白な蛇の様です。　しかも3匹居ます。

食料袋を開いて残った食料を確認します・・・ちょっと足りないかも。
緊急とは言わないけど、食べれそうな物があるに越した事は無いのであの蛇達を食料にしようと思います。

アラヤちゃんにそれを伝えるとこくんと頷いて術式を展開していきます。
私も武器を取り出し術式を展開して、準備が整うとアラヤちゃんと一緒に道のど真ん中に居座る白い蛇達に戦いを挑みます。