さんじゅういちにちめ。

戦いが始まってすぐに周囲の水を凍らせながら自分の領域を拡散させていきます。
まずは氷柱を沢山形成させて準備を整え・・・と思ってたら、形成させた氷柱に当って早速ご退場のイソギンチャク。

いきなり出鼻を挫かれて溜まった憤りの行き場を失ってしまいます。
折角沢山の氷柱を形成したというのに・・・このままでは勿体無いのであまり関係の無いローレライさんへぶつける事に。
大量形成した氷柱の飛礫が左右八方から飛ばしてローレライさんは哀れにもハリネズミになりました。

・・・人魚の肉って食べれるのかしら？

溜まった鬱憤を爆発できて気分も大分落ち着いた私の所に、背後から唐突な一撃を与えられて思わず地面に倒れこみます。
何事かと思って背後の方へ視線を向けるとアラヤちゃんが気まずそうな顔をして私の方を見ていました。

どうやら今の一撃はアラヤちゃんの誤射だったようです。

誤射された攻撃の影響？　アラヤちゃんを見てると何故かほんわかドキドキしてきます・・・。


　＊　＊


戦いも無事に終わって一段落してる所にアラヤちゃんが駆け寄ってきて、さっきの誤射の事で謝ってきます。
私は「平気だから大丈夫。だから気にしないでね？」と伝えてアラヤちゃんに笑顔を向けます。
ちょっとビックリはしたけどそんなには痛くなかったし、私も以前に誤射してるからこれでお相子様なのです。

ただ誤射に含まれてた何かの影響からか、アラヤちゃんを見てると何だか段々と胸がドキドキしてきます。
というより今日のアラヤちゃん、いつもに益して可愛い・・・。　お膝の上に乗せてなでなでしたい・・・。

でも我慢。私はお姉さんなのです。アヤラちゃんに不躾な事をしちゃダメなのです。
表面上は笑顔を取り繕いながら内面で理性と本能が戦争をしてると、アラヤちゃんが休憩でお茶を淹れてくれるそうです。

今日に限って変な葛藤をしてた私はつい二言返事をしてしまい、そのまま休憩する事に。
アラヤちゃんがテキパキとお茶を淹れる準備を正座をして眺めながら・・・

やや本能が勝ってきてる感じに、アラヤちゃんのお茶を淹れてる後姿に熱い視線を送ってました。

・・・農場に居た頃はアラヤちゃんくらいの子達の面倒をよく見てた私。
お膝の上に乗せて御本を読んだり、髪を手櫛で梳いたりしてあげてたのを思い出してほっこりします。

きっと顔が凄く緩んでたのでしょうか。
お茶を淹れて私の方へ戻ってきたアラヤちゃんの顔が微妙な感じになってました。

いけないいけない。
気を取り戻した私は隣に座ってくるアラヤちゃんから淹れたお茶を受け取り、内心ドキドキしながらもそのまま他愛も無い雑談をして一日を終えます。


　＊　＊　＊

夜が明けた次の日。
昨日のドキドキも一晩寝たら沈静化していて元の私に戻りました。
流石にあんな状態が続いたら今後が大変だったのでよかった・・・のかな？

とりあえず朝食を取って気分を・・・と思ってると何か食料袋の所で蠢く影を見つけます。
その影の正体は──アヒルさんでした。

そして私がこちらに気付いたと見るや、そのアヒルは事もあろうか食料袋を咥えてそのまま持ち去っていこうとします。

思わず大声で叫びながらアヒルの後を追っていきます。
その声でアラヤちゃんも事態に気付いて私の後ろを追いかけてきます。

そして暫く追いかけてやっと追い詰めたアヒルさん。
でも私達が騒がしくしてたせいか、余計なものまでやってきて・・・モズク？　酸っぱそうな海藻に塗れた動物が・・・！？
私が変わった姿の動物に見惚れて油断をしていると、追い詰められて逆上したアヒルさんが食料袋をぶん回しながら私達の方へと向かってきます。

どうやら戦う気が満々のようです。　いいでしょう、やるというならやられる覚悟もあるという事ですね。
武器を構えて戦闘体勢に入る私達。　このまま返り討ちにして今日のお昼は鴨肉のソテーとモズクの酢の物にしてあげます。