——ここはコミックメルンテーゼマーケット会場。

メルンテーゼ中から数十万人もの人間やエンブリオが集まるという。

夏はひたすら暑く、冬はひたすら寒い。そんな中、朝から何時間も並び、お目当ての薄い本を買い漁るという、異様とも言える宴だ——。

見渡してみると、みな律儀に地に足をつけて歩いている。

エルに案内されるがまま、アルルゥが拠点を構えているという場所に一行は向かっていく。
なんでも自分で作った物資の販売をしているらしい。
巨大なゴーレムが、「なのは完売」と書かれた紙をぶら下げている横を通りぬけ、途中スライムにルリが「キミ、アニメキャラより可愛いね」とナンパされ困惑する事態も起きたが、ある場所でエルは足を止めた。

「最後尾」と書かれた看板を受け取りながら、ミニドラゴンが首を傾げる。

ジリジリと太陽が照りつける中、一行はひたすら列に並び続けた…。

そして、アルルゥの姿がようやく見えた、その時……。

無情にもアルルゥの大きな声が響いた。

平謝りをしていたアルルゥが、ルリたちの姿を見つけ駆け寄ってきた。

談笑していると、「え、ルリ様？」「ルリ様って、あの？」「うそー、本物！？」と口々にエンブリオたちが集まってきた。

ルリが困惑しながらも自己紹介をすると、きゃーっと黄色い歓声があがり、サインや握手をねだられはじめた。戸惑いながらも、場所や相手が違うとはいえ、普段やっていることなので笑顔でルリは応じている。

ちらり、アルルゥが本を売っていたスペースに目をやると、招蛇総攻めR-18本　完売しましたとかかれたポスターが売り子たちの手により貼られていた。

買えなくてよかったのかもしれない、と心のなかで思うセイレーンだった。