異世界冒険日記２６

　仰向けで転んでしまったアニマちゃんの胸に刻まれていたのは、
　どう見ても新しくできたような、深い生傷。

　悲しそうな顔をしたアニマは、静かに語り始めた。

　生まれつき持っていた「夢うつし」の能力は、ほかのひとと見る夢を入れ替えちゃうもの。
　おともだちのカーバンクルさんと、時々夢を入れ替えて楽しんでいました。

　そんなある日……

　目の前に現れた一人の男は、瞬時にわたしとカーバンクルさんから光を奪いました……

　鎖につなぎとめられ、身動きが取れなくなったわたしに、
　その男は大きな刃物をちらつかせながら、ゆっくり近づいてきて……

　男の手の中で怪しく光る刃物

　胸に深く突き刺さった刃物が引き抜かれ、
　床に落ちる小さな体、広がる紅い池。

　部屋に残されたのは、
　鎖につながれて身動きが取れないわたしと、
　息も細くなり動かないカーバンクルさん

　悔しかった。
　ただただ、悔しかった。

　唯一のお友達を失ってしまうこと。
　ひとりぼっちになってしまうこと。
　これから自分の身に降りかかること。

　そんなの、いやだ……！

　逃げ出したところで、強くなるわけでもなく、
　刻一刻と時間は過ぎていきました……

　反撃の手がかりが一向に集まらず、
　ひとり、街をうつむきながら歩いていると、
　周囲の人の「夢が入れ替わっている」という話題を耳にしました

　研究所の「わたし」が、助けを求めて力を暴走させている……

　このままじゃいけない……！
　でも、わたしじゃあの男を倒せない……
　わたしのせいで迷惑が広がっているから、周りの人にも頼めない……






　次第に孤独になる
　寂しくなる







　そして、ある夜の真っ暗な夢の中



　白いしっぽをみつけ、わたしは必死に飛びつきました



　すると、複製された「わたし」たちのたくさんの手が現れて……



　一緒に白い尻尾を引きずり込んで……

　泣いているアニマちゃんを、おいらはただ見ることしかできなかった……

　こんな、苦しい思いでを……
　こんな、重たい役目を……

　ずっと胸にしまっていたなんて……