——異世界で気ままに逢引を続けて、２人はのんびりと歩く。


キラキラと輝く、小川。
幾数もの星が散りばめられたかのようなその水のきらめきは、
まるで夜空を流れる天の川のようだ。

「見て、綺麗な川ね。昔一緒に遊んだ川を思い出すわね」

彼女は楽しそうにそう話し掛ける。
……その腕に抱いた、少女を模した人形に。

人形はただ彼女に抱かれるだけの、無機質な存在だ。
けれど彼女はそれを意に返すことも無く、
まるで絵本を読み聞かせる母親のように、人形に言葉を向け続ける。


「川で遊んでいたなんて、君達姉妹は意外とお転婆な子どもだったんだね……？」

妻の顔を覗き込んで、ブルートは微笑んだ。
それからその無機質な腕を、彼女が抱える人形……“彼女の妹”へと伸ばす。
ブルートの指先が、人形の持つ琥珀色のふわふわした髪をなぞる。
人形の持つブルーのグラスアイが、川の光を受けてキラキラと反射する。



……その人形は、遠い遠い昔。

ブルートが妻のために作った、世界でたった一つだけの人形だった。
それは、いつか語られる日が来るかもしれない、追憶の記憶。

今はまだ、その時ではないようだけれど。


「川のほとりに、綺麗な花が咲いていたのよ。この子の瞳の色にそっくりな」
「……そう。さぞ美しい花だったんだろうね」
「此処にもあるかしら。青い花が」
「……探してみようか」

ブルートの提案に、妻はふわりと笑う。
……彼女の腕に抱かれた“妹”も、心なしか嬉しそうに見えた。