俺様は猫である。名が無いままに墓の世話になる羽目に陥り早半年。
そろそろ復活するよねとの期待が高まる中、俺様、冬眠したい気分。
＼土の中、あったかーい／

前回の粗筋
負傷前後の記憶を忘れている奏撫が療養先で保護者に何があったのか説明しろと詰め寄ったら、
思ってた以上に自分が酷い目に合ってるらしき事を匂わされ、それでも知りたいのか？と逆に問いかけられてちょっと半泣き。
看護師代理のリゼさんから慰められてるナゥ。



禰宜「対象が『自転車に乗れるようになりたい』のでしたら手を離しますし、『乗る感覚を体験したいだけ』なら離しません。貴女はどちらですか？
ご自身の身に起こった事を知り乗り越えたい？　単に私が貴女に隠し事をせず話をするかどうかを確認したかっただけ？」

禰宜はいつものように冷静に、いつものように穏やかな顔で、
知ったら再び狂うかもしれない記憶を再現されても貴女は冷静に耐え正常たる判断を行えるのかと、奏撫に問いかける。

奏撫「…」
奏撫は無言で俯いている。問いの答えに詰まったのも確かだ。が、『虫の声がすっかり秋に様変わりしましたね。』とのどかな会話でもしてるかのような調子でこのような話を続ける禰宜の精神様の異質さに初めて気づき、土蜘蛛親族ではないと言ってはいたが関わっている以上この人もやはり普通の…マトモな人間ではないのだなと思うと尚更に反応を返せなくなり。

早い段階で禰宜が所謂人間では無いと気付いていたリゼは、発言に感情を乗せぬ禰宜の様子はスルーし。
むしろ泣くのを堪えて動けなくなっている奏撫を心配し。
リゼ（このままだとカナデちゃん、向き合うのやめようになりそうだなぁ。……元々は心が強いけど、事件が酷すぎて心がばっっきり折れたかな？）　
奏撫の背中を撫でながら彼女の精神の安定度合いを読み取り…まだ、大丈夫だと。錯乱は…多分、まだしないと判断し傍らに座り続ける。
いきなり切れて襲われる可能性もあるけど、そこは覚悟してるし。


応えぬ奏撫を前に、禰宜もまた黙して静かに奏撫を見ている。
禰宜「……」



沈黙の時間が延々と続き。



奏撫「……？」
あまりの長い沈黙にちょい戸惑って、
奏撫はちらりとだが、ようやく禰宜に再び視線を向けた。

奏撫の視線を受けた禰宜さんは、
禰宜「では記憶の再現は止めまして、その後の朔位殿が取った行動と対処をお伝えしましょうか。」
と、問題据え置きで話を先へ進め始めた。

奏撫「…へ？」
あまりのあっさりっぷりに間抜けた声を漏らす奏撫。

禰宜「貴女が錯乱した原因は、喰われた際の体験そのものではなく、ご自分を襲った相手が葛築さんだった事が理由のようですから。
今無理に過去の映像を見ずとも、ご自分でゆっくり思い出してください。」
既存の物語は１から順に読まずともそれなりに読み進めれる。
結果さえ得られるなら手順は順不同で構わず。
今の目的は奏撫を立ち直らせる事であり、『全てを知らせる』は手段であって目的ではないと云う事らしい。

リゼ「ミステリーとか、犯人を確認してから読む人とかいますね……。」
ある意味、そのパターンか。と。犯人カヅキと事件後のシーンを読んで、最後に事件中を読みに行く……そんな感じだろうか。
リゼ「無理に見なくてもいいみたいですが、どうしますか？」
これは…禰宜さんはカナデちゃんがどこまで錯乱を自制できるか試してたのかな？と思いつつ、奏撫にフォローをしてみる。

その奏撫も、なんとなーく自分が試されてたのを感じ取り。真剣に悩んで泣きを堪えていた分、反転して怒りがふつふつと湧き上がり。
押し殺した声で漏らす。
奏撫「……あたし、禰宜さんの事嫌いだと思う。」

禰宜「知ってます。」

いつも通りの様子。いつも通りの口調で返され。
反射的に怒鳴り返す奏撫ちゃん。
奏撫「いや、そーじゃなくて！確かに今までもムカツク事されたから勢いで大っ嫌いとか言ってたけど！今、改めてあんたは嫌いって思ったのよ。」


禰宜「ええ、ですからその流れも含めて存じてます。まあ私への個人感情は置いときまして、話を続けますね。」

奏撫「…………」
で、
いつも通りの様子。いつも通りの口調で返され。
奏撫はがっくりと脱力した…


見ていたリゼさんもどっと疲れたようで。
リゼ（あちゃあ、私が言ったことと禰宜さんの言葉と態度で悪い方にいっちゃったか……。まあ、わかるけど。カナデちゃんはまっすぐだなぁ）

奏撫の心のケアがもちろん一番の目的だが。奏撫ちゃんと禰宜さんの仲をもう少し良好な方向へ 取り持つのも、リゼが密かに目指している目標だったり。
だが期待とは裏腹にだんだんどんどん仲が険悪になってくような…禰宜さんは変わらずだが、主に奏撫側の感情が。

リゼ（禰宜さんの誰に対しても変わらない姿勢も……感情が基本凪いでるか、殺し方を知ってるからなんだろうな。）
神主として冷静なのは結構だが、感情豊かな奏撫との相性は宜しく無さ気である。

前に座っている少女二人の脱力は放っておいて、禰宜は説明を続ける。

ほぼ死亡状態の奏撫を確保した後に、朔位が奏撫に執り行った救命処置。
奏撫を禰宜の元へ預けた後に、朔位は脱走した葛築もとい和葛姫を追い、その際魅月さんの協力も得て無事葛築の体は確保し和葛姫はその体から追い出した…らしいと。

禰宜「朔位さんが私やリゼさん魅月さんなどと積極的に他者の力を借りているのは、貴女の失った魂魄とお体を補填すべくほぼ人一人分の材料をご自身の身の内から削り取ったせいでしょうね。今の朔位殿は体調が苦しくしんどい状態だと思います。性格上やせ我慢なさってますが。」
朔位的にそこまでバラスかっ！？てとこまで話してるよ。

葛築という名の弟の存在そのものを無意識に記憶から排除していた奏撫だが、その名を耳にすれば…なにか、いいような物凄く嫌なような大事なような永遠に消してしまいたいようなぐちゃぐちゃっとした感情が湧き上がる。
奏撫「その、か、葛築…とね、ワカヅキさんって人との関係が今一よく解らないんだけど。葛築って人は、ワカヅキって悪霊に取り憑かれておかしくなったの？」

取り憑かれたとは少々違いますと言い、朔位から伺っていた葛築に関する情報を開示する。奏撫には知られたくなさそうだったが。彼女本人から知りたいと望まれた場合は教えますよと伝えてある。
禰宜「魂の観点で見るなら元々葛築という人物は存在しません。受精からまださほど時を得ておらずまだ魂と呼べるものは無かった胎の中の子に、土蜘蛛の祖霊の一人にして怨霊になりかけていた和葛姫殿が入り込みました。葛築は和葛姫を封じる為に上書きで作られた人格です。…もっとも、だれしも性格とは育てられる過程で作り上げられるものですがね。葛築さんはその性格・人格を残す本人の魂が存在しないので……」

例えるならパソコンを作成してハードディスクを選ぶ際、新品を設置するはずが手違いで胡散臭い中古ディスクが入ってしまったみたいな…
上書きで色々新規ソフトを入れて不具合が起こらぬようにしたけど、この中古ディスクは新規データ保存を受け付けず、電源落とせば新規ソフトはすべて消えてしまうみたいなありえぬ状況。

奏撫「ワカヅキを追い出したから、もう、葛築は消えてしまった……？」
自分で葛築が消えたと口にしたら、心の奥底が重苦しくずしんと冷え込み…

禰宜「御当主を通した伝聞ですが、魅月殿からの情報によれば屋敷を脱走する暫く前から既に、葛築さんは和葛姫殿に呑まれかけていたらしいので。これは救いになるか判りませんが…奏撫さん、貴女を襲ったアレは葛築ではなく和葛姫なのだと思われます。」
奏撫が『葛築を失ったかもしれない』とショックを受けているのはこの禰宜にも察せられたようで。彼なりのフォローを口にし。…でもそれでも、どことなくずれてる。

この神社で知り合うまでは奏撫の事も葛築の事も知らなかったリゼだが、
まだ奏撫の精神が不安定だった時期に実力行使で心を戻そうと奏撫の精神世界に同調ダイブした経験があり。
その時に奏撫の記憶の欠片から、元々この二人はすごく仲の良い姉弟だったと知っている。
リゼ「……壊れる前に術で人格のコピーをしてればもしかしたら……。でも、カヅキくんそのものといっていいかは術者の力量によりますね……。人一人の人生の作り直しとも言えますから……。」（でも、そもそも土蜘蛛の一族がバックアップの必要性を感じてるかな……。……あ、カナデちゃん、ヤバい？）
他者に対してメンタル面での土蜘蛛一族のドライっぷりは偽りの島に居た時に、岩絃を通じて何度か目にしている。

その土蜘蛛のドライさは禰宜も当然知っており。
禰宜「うーん…彼らは今目の前にいる人物よりも祖霊を重視する傾向がありますからね。」

土蜘蛛と化した一族血縁者から産まれる体に土蜘蛛の祖霊が転生で宿りて、初めて『妖怪土蜘蛛』と成りえるからね。転生ではなく現世で穢れまくったままの魂が直に取り憑いたのであっても、古参の土蜘蛛にしてみれば出来合いの葛築よりは和葛姫のが大切にされる可能性は否定できず。
地霊が混じった魂が降りなければ只の人間の血縁者である。

禰宜「第四世代…朔位殿の辺りからまた心の在り方が変わってきてますから、魂に似たモノを用意し葛築殿を記録か記憶かする手をうっておられたかもしれませんが……。」
力を付けつつある若手土蜘蛛達次第で葛築の方を優先して救う手を整えてあるのかもしれぬが、難しい技術なのは確かだし楽観視はできないと言いたげな、珍しくも厳しい表情を浮かべ。


（今回日記もまた途中で終わるか！？）

魅月に関しても結局痛みは全部普通にあるので
大差なかったりはする。

>猫さん

後片付けをしながら墓を掃除。
またたびを供えたようです

※レーンは間接キスとか気にする人のようです。

レーンはとうとうお味噌汁を飲んだ！

プリムスはうんうん、と頷く。

※プリムスは　"間接キスとか、なにそれ訳が分からないよ"　的な人のようです。


***　***

※longplayer　で検索すると海外サイトで生ライブ放送やっています。実際は歌ではありません。

※モーツァルトのレクイエム　『怒りの日』　　多分有名です。
※ヴェルディのレクイエム　『怒りの日』　多分有名です。

急に念じだした姿を首傾げながら見守ると

ぽん☆と同時の掛け声に小さくびっくり。

拍子抜けというか、裏声の可能性もあるしにゃーんはにゃーんですしどうリアクションしたらいいのかなとスーっと冷静になってしまいます。

その場でくるくる回り周囲を確認する立方体、、、

　　　△　　土　▲
　　（　㊤　皿　㊤）　　がしゃーん
　　（　　　　　　　　）　　　　　　
　／│　　塊　　│＼　　　　　　　　　がしゃーん
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