【エピローグ】

元いた世界では夏も終わり、一揆もまた終わりを告げた…。
参加者はそれぞれ元の世界に戻っていったり、もう少しメルンテーゼに残り続けたり、あるいはそこで暮らし続けることを決めた者もいる。
一揆を終えてそれぞれが異なる道を歩みだす…、俺たちもまた…俺たちの道を歩み始めた。

俺はリフィと共に俺のいた世界へと戻り、俺の家で共に暮らしている。
ルーディは引っ越しの前日には元いた世界へと帰り、しばらくはメンテナンスで一年以上は外に出ることは出来ないようだ。
元々俺を護るべく生み出されたのがルーディだが、俺の成長に合わせて強化される身体がこれ以上の強化を受け付けずに負荷が大きくなった為、連動を解除するのとまだ取れていなかったバグを取る作業、その他もろもろで長い時間がいるとのことだ。
ルーディは俺にとってこれからもいい相棒だ…、また俺の世界に遊びに来る時が来たらカレーを作ろう。
新しいレシピも開発中だ…、あいつが気に入ってくれるカレーを考えておこう。
コールは俺の中に光を残しつつ人型だけ分離し、単体での行動を行うようになったコールは現在俺の実家で暮らしている。
今も普段は非実体モードだが、必要な時は離れたところから俺の力を使えようになり、もし妹や弟の身に何かあればすぐに実体化して助けられる。
コールがそうするようになった理由も俺とリフィのことを考えてのことである…、普段は必要以上に懐いていたコールだが、離れてしまうと少し寂しいものだ。
けどちょくちょく顔を出すことは出来るんだ…、もし俺に会いに行きたい時にはいつでも来てほしい。
いつでもウェルカムだが…妙なことをすればお仕置きは欠かさないつもりである。
俺の住居は前日には引っ越しをして、今は一階建ての一軒家だ。
新しく建てられた割には格安ではあるが狭いところに建てられた家で、家の広さは引っ越す前のアパートと大体同じくらいという一軒家としてはあまり見ない程度には小さい。
しかし二人で過ごすには広すぎないくらいがいいし、車を入れるところもある…、耐震のしっかりした作りもしているのだから問題はなかった。
リフィが俺の世界へと来てからは、俺の車に乗せて色んなところへと行った。
一番に見せたかった富士山もよく見えるスポットから見せにいったところ、その風景にはリフィも目を輝かせていた。
久しぶりに俺の実家へと行った時には俺に彼女が出来たことには特に妹…長女の美亜が驚いていた。
リフィに対して美亜は表向き可愛げある妹を演じているものの裏では嫉妬オーラを放っていたのがよくわかった…、そろそろ美亜にも恋人が出来ればいいんだが……というかそろそろ兄離れしておかないとこの先が危うい気がしないでもない。
リフィは今の髪色ではこの世界では目立ってしまうということから、この世界に来る前に予め入手していた染色石を使い、現在は毛色を緑から黒へと変色している。
染色石はこの世界の髪染めとは違い、髪などの毛の色素を直接変換する類の魔石で、これによる変色は再度別の色の染色石を使うまで変わらないのが特徴なんだとか。
髪以外も綺麗に染まるからそこの毛もちゃんと染まってはいたりする…、どこのことかはノーコメントで。
夏を終えて二学期に入ってからは、リフィは母さんが勧めてくれた内職をして過ごしていた。
やはり手際のよさもあってかその日のノルマもはやく済ませてしまい、昼間の家事もあっという間に終えてしまう。
しかしリフィ曰く、やることを終えた後は暇というよりは俺がいない間が寂しかったそうだ。
その分、俺が学校から帰ってくる度にリフィが猫のように玄関までやってきてはよく抱きしめられていた。
リフィと過ごす時間が長くなり、これまで以上にリフィと過ごす日々が充実している。
秋は紅葉の舞う道をドライブ、冬は実家でクリスマス、春は桜の木の下でお花見にも行った。
これから先もたくさんの日々を共に過ごしていきたい…、もっとリフィとたくさんの思い出を作りたい…。


そして俺が一揆に参加してから今年でもう一年…、再び夏は訪れる。


青く広がる空、綺麗にかかった夏の雲、鳴き続ける蝉の声…、その日も相変わらずの暑さが続き、扇風機や冷房が欠かせなくなる。
プール開きにはしゃぐ子供たちは皆で並んで学校へと向かって走り、近所の主婦は日傘をさしながらもいつものように会話が弾み、お隣さんの家ではペット用のビニールプールで大型犬が気持ちよく水遊びをしている…、いかにもありがちな平和な夏だ。
去年の俺といったらこういう日は冷房きかせてPCの前でネトゲかギャルゲーをやっていたが、今となってはそれもまた変わっていた…。

「今日も暑いなぁ…、今の自分から見ればこんな暑さの中でも外で思いっきりはしゃげる子供ってのもすごいもんだなぁって感じるよ…」
「ふふっ…、正義さんも小さい頃はあんな風にはしゃいだりしていた時があったんじゃないですか？」
「まぁそうだなぁ…、プール開きは子供の頃の自分にとってはビックイベントみたいなもんだったよ」

その日は冷房の効いた部屋でテレビを見つつ、テーブルの上の素麺をするすると食べる。
去年までの一人でゲームをしていた夏とは違い、今ではリフィとの時間を優先することも多くなった。
高校卒業後は自宅から徒歩五分の大学へと進学し、昼食は家で食べることが殆ど。
今日から夏休みに入り、九月上旬まではリフィとの夏を充実させられる。
リフィの髪もすっかり伸びてストレートロングになった…、リフィ曰く俺みたくロンゲにしたかったそうだ。
髪型が変われば印象も変わるとは言うものだがリフィがロンゲになってからはよくある清楚系ヒロインに見えてくる…、すごくヒロインオーラが出ている気がする。
今日は俺が選んだ白のワンピースを着ているが、黒髪女子に白のワンピ—スの組み合わせは実によく似合っている。

「いいですねぇ…、ウォータースライダー。正義さん、ここのプール行ってみたいです」
「あぁ…ここかぁ…、去年は美亜に連れてけって言われて一度行ったなぁ。あの時はえらく渋滞していて、美亜は飲み物を飲みすぎて長いことトイレを我慢してたよ。今年行くなら、早めに行ったほうがいいか…、早めに出て高速を避けて丁度オープン少し前程度ならそこまで並ばずに済むよ」
「じゃあ明日行きましょう！正義さんも何処か出掛けたいって言ってたじゃないですか！」

リフィはえらく目を光らせている…、そんなにウォータースライダーで滑りたいか、リフィ。
けどそんなリフィの気持ちもわかる…、初めて見るものに対して驚いたり興奮するというのはそう珍しいことではない。
俺も幼い頃はそうだった…、初めて見るウォータースライダーに興奮を抑えられなくて、つい上級者コースを滑ってきてはそのあまりの速さに絶叫していた。

「あははは…、リフィすごくきゃっきゃしてるよ」
「まだまだ行ったことのないところや見たことのないものもありますから。正義さんと一緒に行ったり見たりするのが楽しいんです」
「そうか…、それじゃあ明日に備えて、夕方にでもリフィの新しい水着選びに行くか？」
「新しい水着ですかぁ…、どんな水着にしましょう…」

するすると素麺を口にしつつ、今日の午後…夕方の予定と明日の予定を決めていく。
リフィの水着…、メルンテーゼで海に行った時に見た水着は確かピンクの水着だった。
今年は白のビキニがよさそうだと思ってみたり…、というか着せたい。
肌色面積が少ないとリフィも気になってしまうし、前の水着と変わらない程度の大きさがよさそうだ。
まぁ…家の中で着せるという意味ではマイクロビキニもありかもしれない訳で…。

「正義さん…、もしかして私の水着姿とか考えてます？」
「はっ—！？」

水着のことを考えていると、リフィは顔を近づけては俺の考えてることを読んだ。
気がつけば、「なぜバレた」というのが俺の表情から出ていたことだろう。

「もう…正義さんったら」
「いや…そりゃあ俺もさ、男なんだからさ。自分の恋人の水着姿とか…そりゃあ考えるよ？白の水着とか、あと腰にパレオとかさ」
「なるほどなるほど…、正義さんは白の水着にパレオがいいと……、うふふ」

俺の放った言葉をさらさらとメモしていくリフィ。
どうやら水着選びの参考にするつもりらしい…、しかしメモしているリフィの様子は嬉しそうだった。
そして俺はするすると素麺を食べ進める…、そして最後の一口をお互いに食べ終えれば、今日の昼食はこれで完食。

「ふぅ…ごちそうさま」
「おそまつさまでした」

リフィは食べ終えた食器などをまとめて運んでいき、俺は食後の冷たい烏龍茶を口にしていた。
夕方までは時間もある…、この後はどう過ごそうか。
夕方に出掛ける以外は特に何もない…、ネトゲをするのもいいけど今日は特にやりたいという気分でもなかった。
暇な時ほどとことん暇なものである…、せっかくの休みだから何かしたいとは言ってもそうぱぱっと決まらない。
リフィが食器を洗っている中、俺は烏龍茶を飲みつつテレビに映る情報番組を目にしている。

「（しかし明日も結構じりじりと身体にくる暑さだろうなぁ…、水着選びの他にも明日の飲み物や新しいクーラーバックを買っておこうか。日焼け止めも必要だな…、リフィと一緒に外に出ることだし）」

そんなことを考えているうちに、リフィは片付けを済ませればぱたぱたと俺のもとへ…。
隣に位置してはぎゅっと俺を抱きしめると、馴染みある確かな胸の感触はしっかりと伝わってくる。

「リフィ…？」
「こうしていて、いいですか？一緒にいられる時は、もっと正義さんと…こうして触れていたいんです……」
「……抱きしめられながらそういうことを言われると、俺は夏の暑さにやられてしまうよ」
「正義さんがエッチなのは、元からじゃないですか」
「さらっと言ってくれるなぁ…」
「正義さんのことはちゃんとわかってますよ…、もう…一年なんですから」

リフィがそっと顔を近づければ、俺はそれを受け入れると互いの唇はゆっくりと重なった。
浅い口づけからやがて深く濃い口づけへと変化をしていき、互いに舌を絡ませ、口づけを交わし、抱きしめ合う。
俺はリフィのワンピースの肩の紐に手を伸ばし、リフィのワンピースを脱がしていく…。
ブラ紐が目立ってしまう為か下にブラはつけず、ワンピースの下に纏う縞柄の紐パンも…その紐を解いては脱がしていく。
俺もリフィにシャツとトランクスを大胆に脱がされては、お互いに生まれたままの姿を曝け出した。
俺の身体を倒して上に跨るように位置しながら、リフィの瞳は俺を求めていた。
俺自身もまたリフィを求めてじっと見つめている。
ゆっくりとその腰を落とす時…、互いの熱が交われば与えられるその刺激は全身を駆け抜けた。
もっと繋がりたい…、もっと満たされたい…、もっと愛し合いたい…、俺たちはただ求め、深く激しく交わり合った。
俺の上でリフィが踊り、俺はその柔らかな肌に触れ、共に口づけを交わし、熱はさらに加速し、欲求はさらに高まっていく。

「っはぁ……ぁ、正義さん…、正義さん……」
「リフィ……」

その日の昼は夕方までは…すぐにでも満たせる欲求を満たし合っていた。
冷房の効いた室内環境など嘘のように暑く感じる…、しかし交わり合うことで感じられるその熱は俺たちにとって、心地のよいものだ。
リフィと過ごす二人っきりの夏…、色々な意味で熱い夏になりそうだ…。

アクスをぶんぶん振り回しつつ