メルンテーゼでは未だ寒い日が続く中…、元いた世界ではまだ夏は続いている。
四季の変化の速さがこっちと向こうでは全然異なる為、それぞれの環境にあわせた衣服も必要になる。
こう暑い場所と寒い場所を交互に行き来していると、身体が環境にあわせるのについていけなくなりそうだ。
しかしそれもメルンテーゼが冬の間だ…、メルンテーゼが春になる頃には負担もある程度は緩和されるだろう。
さて…、次の一揆の進行に備えて、今日はコールが特訓をするよといって俺をある場所へと連れて行く…。

コールに連れられてやってきた場所は、船で大体30分程度で着く無人島。
この無人島周辺は基本的に無許可で入ることは禁止されているが、許可された指定の送迎ボートでここへ訪れることは許されている。
寝泊りする為の宿泊場所はなく、寝泊りする場合は予めテントや寝袋などの準備は欠かせない。
帰りのボートは島の停留所に朝・昼・夜に一便ずつだが、それ以外の時間に必要な場合は停留所近くに設置された電話でボートを呼ぶことも出来るし、他の客が乗ったボートが停留所にやってくればそのボートで帰ることも出来る。
しかしリゾート施設の充実に伴い、この無人島へとやってくる客もどんどん減っていき、今日のように客がまったく来ない日すらあった…。
いかにも何処ぞのテレビ番組の無人島生活に出てきそうな無人島といった感じで沖縄やワイキキのような華やかな雰囲気はないが、今日のように晴れた日にはここへ訪れるのも悪くはないと思う。

そうしてコールが指差したところには、ごく平凡なレジャーシート…とかではなく、ブルーシートが敷かれていた。
こいつがこれを敷くとどうも如何わしいものにしか見えなくなってくる…、明らかに狙ってやってるだろう。
そのいつにも増してぺかーっとした満面の笑顔を見るとよくわかるぞ？

俺はシートの上にうつ伏せになると、その近くにコールが座る。
しかし何か嫌な予感がしないでもない…、このシートからすると次に仕掛けてくるのは…。

その時だ…、何か妙なオーラを感じた。
明らかに何か企んでるような、既にそれを手にしているような…！

俺はコールのいるほうへと振り向けば、何やらとっさに隠した。
本当に日焼け止めなら隠す必要もなかろうに…。
俺は身体を起こし、コールをじっと見つめた。そう…、目で問いかけるのだ。
本当にそれは、日焼け止めなのかと。

やはりいつものコールである…、俺がガリガリ君で釣ると言うとおりに即アクション。
そしてコールが手にしていたそれは…、やっぱり日焼け止めではなかった。
その透明なボトルと記された二文字…、何処までも予想通りのことをしてくれる。

コールの手元には、今度こそ本物の日焼け止めがある。
俺はコールから日焼け止めを受け取ると、まずは一滴たらして中身を確認する。
コールなら中身を摩り替えたりとかやりかねないと思ったが、今度はちゃんとした日焼け止めだ。
クールタイプで、塗った後もさわやかである。

とにかく、今度こそ日焼け止めを塗ってもらう。
背中はコールに塗ってもらい、後は自分で塗れるところは自分で塗る。
コールが日焼け止めを身体にかけろと如何わしいポーズをしながら要求するが…、俺はもちろん却下。
こいつの場合は塗らなくても日焼けしないし、ねだる理由もただかけられたいだけである。

コールは俺に、二本の木刀を手渡す。
渡されたその木刀は、一本は大太刀、もう一本は小太刀である。
二本の異なる長さの刀…、それからあるものが俺の中に浮かび、コールが俺に何を教えようとしているのかを察した。

コールの両手には次々と光の粒が集い、それはコールの手に二本の対なる木刀を具現化した。
本気だ…、コールは本気で俺に教えるべきものを徹底的に叩き込むつもりでいる。
こいつが本気の時は見ただけですぐにわかる…、それだけコールの身体から確かなオーラが感じられた。
…これは翌日も、痛みが引きそうにないかもしれないな。

夏の晴れた空の下…、無人島に俺とコールの二人。
コールとの特訓は、こうして始まった……。

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MISSING REEL

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俺はイメージした…、その手には二本の刀があることを。
右手には大太刀、左手には小太刀…、ぐっと握ればその手には刃のない状態で刀は実体化する。
あとはいつものように…、いや…、今回からは少し違う。一本ではない…、二本の刀を抜くのだ。
俺は左右の刀を抜くイメージをしながら、その動作を行った。
その瞬間…、左右の刀には光が発し、その光は蒼き刃を形成し…実体化する。

『これで今日から僕は、この姿で戦えるようになったよ…。名付けて、蒼刀コールブランド・二天一流！正義…、これが君の新しい力だよっ』

『そんな贅沢いっちゃぁ駄目よぉダメダメ。この姿専用に別の見た目を考えるのも大変だし、形にするのも苦労するんだから。しかしホントに正義は飲み込みが速いよぉ…、一日でここまで身につけるんだもの。これなら、安心だよぉ…』

翌朝…、コールとの特訓によって俺はようやく二天一流を身につけた…はずである。
というか、あの特訓開始から終わりまでが何やらごっそりカットされたような気がしないでもない。
しかし身体は確かに、特訓を終えて全てを身につけた実感がある…。
身体は多少痛みが残れど、今の自分の回復力であればまた一日経過した頃には癒えているだろう。
刀化を解くと、コールは再びいつもの人間サイズの実体に戻り、いつものように俺の肩に跨った。

おそらくカットされたところで何かあったのだろう、たぶん何かあったのだ。
だけどそれがなかったことにされてるとしたら栗鼠倫に引っかかるからだろう。

それからしばらくして、俺はコールと無人島を離れた…。
一揆も次の進行場所はルーディが決めている頃だろう…、今日は一日休んで明日からまた一仕事してこよう。
今の力でどこまでやれるかはまだわからない…、だけど俺はとことんやってやる。

アクスをぶんぶん振り回しつつ