「出来たわ！匂いも強くないし、勇人でも似合うんじゃない？」

　そう言ってコヒメが差し出したのは、香水だ。以前取れたミントから作ったらしい。一体全体どうやって作ったのかは謎だ。まあ、俺もよくわからんものをよくわからん内に合成したり、くっつけたりしてるんだから、世の中ってのは謎で満ちていても尚、支障なく生活できるってわけで。

（ホント、慣れちまったよなぁ……）

　人や生き物を殴ることに慣れて随分経った。こっちに来てから一か月半。その中で、仲間だった奴が一人——というか一羽、故郷の砂漠へ飛び去って行った。
　いつの間にか、チームを組んでいた奴も姿を消した。何も言わず、何も言えないまま。ろくなお礼も言えないまま。
　そんな中で、ふと思う。

（なんでコヒメは、俺と一緒にいるんだろう）

　ギブ&テイク、というのはもちろんあるだろう。コヒメなしでは突破できなかった状況なんて山ほどあるし、たぶんコヒメにとっての俺もそんな感じなんじゃないかと思う。えーっと、多少は。
　ただ正直、コヒメがずっと俺と、それこそ一か月以上一緒にいるには、理由が足りないように思う。単に考えてない（俺がそうなんだけど）ってんならいいんだけど。逆にちょいと考えればいつでも切れる可能性はある、そんな縁だ。

「……なんか困ったら言ってくれよ。助けられっぱなしじゃあ、お前に悪い」

　ならそれまでは。互いの利益を釣り合わせておこう。切れるときはすっぱりと。金銭関係でこいつと揉めるのは、すげえ嫌だ。