荒地で出会った男の子、勇人って言ったかしら？何か面白い人よね。いや、笑いを取るのが上手とかそんなのじゃなくて、何て言うか…初めて旅に出てきた旅人っていうか、そんな感じ？どうもアタシと同じ別の世界から来た感じで、ずっとそわそわしてるのよね。慣れてないって言うのがしっくり来るかしら。色々と周りのものを珍しそうな目で見てるのよね。アタシの尻尾とか。
　あと、何かと面倒そうな感じにしてるけど、何だかんだで手伝ってくれるのよね。こういう人っていいわよね、頼んだことをしっかりこなしてくれるから。こういう人を見てるとウチのお師匠もこれくらいしっかりして欲しいって思うわよねぇ、ホントにあの師匠は働かないから……はぁ…思い出しただけで溜息が出るわ。
　まぁ、お師匠のことは頭の隅に置いといて…この人、髪が綺麗なのよね。いや、短髪なんだけど。でも真っ黒で綺麗なのよね。アタシは黒じゃないんだけど、ちょっと憧れるのよね…こういう髪。
　
　…ちょっと、触ってみたいかも。
　いや、流石にいきなり触るのは駄目よね。先に声かけてから髪を…って、そんなこと言っても承諾してくれるのかしら？うーん…難しそうよね、色々と警戒してるし。今もアタシと距離開けて歩いてるし。聞いても触らせてくれないわよね。
　じゃあやっぱり無理矢理触る？いやいやこれも駄目よね。そもそも飛び掛って触るものでも無いし…うーん、参ったわね、どうすれば触る事が出来るかしら。
　膝枕させて…は現実的じゃないわよね。それじゃあ眠ってる間に…やだ、これじゃあお師匠のやりくちと一緒じゃない。これは却下ね。
　何か…何かを条件にして、触るっていうのはどうかしら？例えば、アタシの髪を触らせてあげる代わりに髪を触らせてもらう、とか。…でもアタシの髪だと興味ないだろうし、そうね…何か代わりになるもので…うーんと…。
　
　…よし、そうね。いいのがあるじゃない。アタシ自前のもふもふしたやつ。これにしましょう。
　思い立ったら即行動よね、それじゃあ聞いてみましょうか。

　「ねぇ！突然なんだけど———」

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（ひよこが一羽、てくてくと歩いている）

（どうやら同行者を捜しているようだが・・・？）