ラケルトを追って兵舎への進攻をしたものの、

本来の目的であるアムフェイをハメる計画は延期となった、その日の夜。
一度タンポポ荘へ戻り、夕食を済ませたあと、次の進攻先を相談するついでに、
酒を呑もうとアムフェイの部屋を訪れることにした。

酒瓶を片手に、ドアをノックする。

ドアノブを捻ると、言葉通りに鍵はかかっておらず、ドアが開く。
部屋に設えられている机に向かうアムフェイの姿が、目に入った。

そうして、酒瓶を掲げて見せる。




室内から見えない廊下では、バッドボーイが待機していた。

部屋の奥にいるアムフェイには聞こえない程度に抑えた声で、ニスイを窘めながらも、
いざという時にはすぐさま駆けつけられるようにと付いてきたのだ。

無言で、ため息を1つ。
そんなことはわかってるんだ、と言外に訴える。

一度腹を割らなければ、わからないこともある。
この事が原因でどうしても手が下せなくなるのなら、
アムフェイがそれだけ大事な人間だということだ。

社長との天秤が、釣り合うほどに。

……いや。
こうして計ろうとしている時点で、既に釣り合っているのだろう。
本当は、どちらかに決定的に傾けるだけの、重りを載せたいのだ。
裏切りの苦悩と、迷いから、抜け出すために。


アムフェイの隣へ、室内の椅子を運んで腰を降ろし、
持ってきた酒の栓を開け、中身をグラスへと注いだ。

……全て、本心から出た言葉だ。
この席で建前を語る必要は、ない。

グラスを合わせてささやかに乾杯し、喉へ流し込む。
飲み慣れた味の良い安酒だが、高い酒で盛大にやるのはこの一揆が終わってからでもいいだろう。



色々な事を話した。

出会った時のこと。
色々な場所を一緒に攻略したこと。
一揆が終わったあと、どうしたいか、とか。
好みの異性のタイプだとか。惚気けられた。
社長の第一印象なんて話も出た。

そう言って、一度アムフェイの部屋から出る。
廊下には、バッドボーイが微動だにせず待機していた。


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酒で、わずかに舌の周りが悪くなっているが、判断までは誤らない。
フェアリーを呼び出し、社長へ繋ぐ。
まもなくして、社長の応答があった。

通話を切った。
本当に肩の荷が降りた気分だ。

忠犬であり、相棒であり、そして家族と認めた狼を労うように、頭を撫でた。
もう少しだけ待っててくれ、と。

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アムフェイがこちらのグラスに酒を注ぎ、自分のグラスを掲げた。
こちらもグラスを手に持ち掲げる。

今の心を反映するかのような、小気味良くも軽い音が部屋に響く。

その余った鳥の丸焼きで猫の悪魔を召喚したのはまた別のお話。

　＜　　△　　土　▲　　＞
　　（　?　皿　?）／　　がしゃーん
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　　／│　　塊　　│　　　　　　　　　がしゃーん
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