[SummerVacation]

ここは海！そして突然の悪戯な波が春蔵の褌を攫う！！
辺りにはたくさんの人の影！！どうする、春蔵！！消されるぞ！！

「何でも、いいのかよ……」

春蔵が、消え入りそうなくぐもった声で、小さく、漏れた息を噛み潰すように呟いた。

羽虫と呼ばれたフェアリー達は、瞳に宿る光を揺らす事なく、じぃっと春蔵の持つネクターを見上げている。微笑んだような顔と口端を決して崩す事はなく。

——こいつらは何でもいいのだ。誰でもいいのだ。自分じゃなくても。それが甘い蜜なのであれば。こいつら羽虫は、寄生虫は、蛆は、エンブリオは、妖精は、そうやって存在してきたのだから。我らが求め合ったのは、その甘さだけなのだ。それだけの繋がりなんだ。


気に入らねぇ。気に入らない。気に入らない。気に入らねぇ。気に入らねぇ。気に入らねぇ。気に入らねぇ。気に入らねぇ。気に入らねぇ。気に入らねぇ。気に入らねぇ。気に入らねぇ。気に入らねぇ。


フェアリー達の視線から逃げるように、冷たい波間に春蔵は飛び込むと、ひんやりとした水の底へと潜り続けた。


気に入らねぇ。気に入らねぇ。気に入らねぇ。気に入らねぇ。気に入らねぇ。気に入らねぇ。気に入らねぇ。気に入らねぇ。気に入らない。気に入らない。気に入らない。気に入らない。気に入らない。気に入らない。気に入らない。気に入らねぇ。


砂浜に、ぽつりぽつりと一揆の参加者と思わしき人々が居る。水着を纏い、暑い夏の陽射しに対して笑みや気だるい顔を見せる。


気に入らねぇ。気に入らねぇ。気に入らねぇ。気に入らねぇ。気に入らねぇ。どいつも、こいつ、も。


夏の夜。花火。
虫の声。人々の声。祭の声。


火種が夜闇を切り裂き昇り、開花する。
その度に、顔や足下が照らされる。


気に入らねぇ。気に入らねぇ。気に入らねぇ。気に入らねぇ。気に入らねぇ。

背後の木に身体をもたれさせながら、瞬きを繰り返す空を見上げて、冷やし氷を口に運ぶ。
フェアリー達、エンブリオ達が光と共に舞いながら蜜を吸う。


——気に入らねぇのに。


——なんで俺はこうやって、此処に居続けるんだろうか。

——良い、夏だ。


——気に入らねぇ。


————消えたくない。

春蔵は、笑った。寂しくて、笑った。腹が立って、笑った。望んだ物が欲しくて欲しくて羨ましくて、笑った。笑うぐらいしか思い付かなくて、笑った。




もうじき、夏が終わる。次の春も、もうじき、来るだろうか。
この羽虫達は、その春まで居てくれるのだろうか。

「もう、やだ、——くすくす」
「あはは、——ほら、もっとこっちにおいで……」
「うん……あっ」

はい、ころしまーーーーーーーーーす！！！！！！！

連れ込み許さん！おうこらそこのピンク色の小屋にさわんな！！それ拙者の家で御座るから！！なに二人で入ろうとしてぎゅうぎゅう感を楽しんでるのかな！？散れ！散れ！

「やだぁこの人まじピンクすぎてうけるんですけどー」
「それより俺は君のピンクが見たいな」
「げらげら！ばっかみたい！……もう。くすくす」

おっしゃ、拙者のピンク見せたるわ！かかってこいやお前ら！！

ピーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーンク！！！！！！！！！！！！！(syubaba!!)

「「栗鼠リーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーん！！！」」

にんともかんとも。

女（らしきもの）は、そう言うと、メモを残して去って行った。

一方、その頃…