さて、これからどうしようか。
　メルンを一度回ってそしたら、アクアザリアに戻るとしよう。
　ネイのことも心配だ。まだら殿にも挨拶しなきゃ。

　さしあたって、ほかのエンブリオはここに置いていくことになるが、まあ少々のあいだなら……心配だ。いや、ユニコーンがなんとかしてくれる。多分。
　戻って家族とも改めて話したいし、勘当されてもこの際構いやしない。
　もしかしたらもう、勘当されてるかもだけど。今まで押し込んでた自分のこと、話さないとな。


　振り返れば、がむしゃらに走り続けてきた。
　自分の望んだ——結果には、至ったようで及ばなかった感覚だ。
　確かに生き残ることは出来たが、魔神との一戦は私の心に焦げついて落ちない。

　やっぱりヴァルの言うとおり、格闘家にでもなるべきなんだろうか？　いやいや、占術師で暫く食うって決めたんだから。鍛錬は怠らないけど。
　食い扶持がやばそうだったら峰殿なりどこか手伝いに伺うけど、さすがにこれだけあると困らないかな。
　ファルケ殿の言ってたように店を構えるも良し。これから考えなきゃいけないことが沢山だ。

　それから闇殿やヘクター殿の所に挨拶に行って、ああもしかしたらスィナン殿に逢えるといいなあ。
　レジェ殿やブルーノ殿との約束もあるんだったな。アリス殿や陽姫殿は——また逢えるかわからないが、その、モフらせて貰えるだろうか。
　メルンを回ればまた新しい出会いもあるかもしれない。そう思うと、やっぱり心が踊る。

　で、一段落ついたらシアにお願いしてどこか旅行へ行こう。
　いろんな世界があると知ってしまったんだ、見に行かずしてどう見識を広めればいいというんだ。
　隣の大蜥蜴とも暫く長い間柄になりそうだしね。


　この日記も一段落としよう。もう残りページも少ない。
　取り留めのないことばかり書いてるよね？　私。
　何年後かに見なおして、一笑できる思い出になればいい。

　それじゃ、ひとまずはお疲れ様。
　新しいネクター、沢山成るといいね。メルンテーゼ。
　

乾杯の後、麦種を飲みつつ
もう片方の手で零れた酒をおしぼりで拭い

体を気遣われて、嬉しくもあり、情けなくもあり

すぐお持ちいたしますと言い、店員はバックヤードへ
串焼きを一口かじり、感慨深そうに酒を飲みながら

それはそれは嬉しそうに手を広げる雪光の背後から
馬刺しをトレイに乗せたウェイターが歩み寄る

火トカゲに、大切な友人を食べないでおくれよ、と
釘を刺すと、こちらも倣って座りなおした。

ぶつぶつ文句を言いながらも、穏やかな表情で
肩をさする手を上からなでる。

そう言いつつ立ち上がり、街の方向を指差した。
…そろそろ時間は食事時。
戦いの疲れを取る、癒しのひと時をとってもいいかもしれない。

そう言うと、槍を担ぎ直す。

片手を軽く上げてそう言うと、その場から歩いて行った。