レイラって人の話を聞く前におちついて、
ボクが今のじょうきょうでわかることを、まとめてみる。





ボクの中には、もう一人だれかがいた。

あのとき。
ヤタの、言葉の意味がわからなくて、聞き返そうとしたら、
きゅうに、首のあたりをひっぱられたみたいな、かんかくにおそわれて、
気が付いたら、ボクとレイラが、入れかわってた。

からだ、動かせなくなって、さいしょはびっくりして、
ただ、レイラとヤタが会話してるところを、見てた。
そのうち話がすすんで、ヤタは、ボクがだれかのかわりに作られた、って、言った。

そのちょくごに、レイラが、その場に、すわりこんで、
顔を上げて、ボクを妹って言った。
妹ってことは、上に兄か姉がいるってことだから、
あの人は、ボクのお兄さんかお姉さん。
ボクにかぞくはいないって、思ってたから、びっくりした。





きゅうにいろんな事実がはんめいしたけど、
何もわからないのは、かわってない気がする。
ボクは、自分のかこはゆっくりと自分で調べていければいいや、
って思ってたのに、自分の知らないところで、わかっちゃった。
少し、ざんねん。

ようせいは、レイラの名前をよんでた。
だから、ボクの中にもう一人いることも、知ってたんだと思う。
それにようせいは、大事なことを言い忘れるなんてことはしない。
どうして、教えてくれなかったんだろ。
そこはふまんだって、感じてる。

一番きになるのは、ヤタがボクを、
だれかのかわりに作られたそんざいだって、言ってたこと。
レイラはマルグリットって……ボクの方見て、言ったから、
その人のかわり、なのかな。

それならボクは、その人にもどるべき？
それとも、ファイとして、生きていくべき？
……わかんない。
でも、話を聞いて、決めないといけない。





しんじつを知ることができるのはうれしいけど、ちょっとこわい。
それでも、前にすすんでる自分を、そうぞうすれば、
きっと、答えは見つけ出せるって……そう思う。

ファイの解釈で合っていると太鼓判を押す。

それでも、根拠なく言い切る。

小さい、とは言ってもロックのサイズでの事なので、建物なんかは大きい。

わはは、と笑いながら自分の腕をたたく。

　焦っては身を滅ぼしかねんよ、とやんわり嗜めるように狐は言う。

　ふと、人造人間が電気羊の夢を見るという話を思いだし、尋ね掛けた。

　欲望は目的意識を生む原動力になる。
　もしかしたらこれは、彼が人に近づいていく切っ掛けになるかもしれないと、狐は考える。
　ただ、製作者にとっては要らない機能だという可能性はあるが——。

　先程までの、さするような手つきではなく。
　どこか荒々しく、でも慈しみを覚えさせるような手つきで、彼を撫でようと手を伸ばし。

　王が悪かどうかは王の弁明を聞かねば判断できぬことよ、と狐は肩をすくめ。

　質問ばかりでは疲れてしまうかもしれない、と思いながらも、好奇心が抑えきれなかった。
　そう、狐はファイの為に知ろうとしているのではなく、自分の興味を満たすために質問しているのだ。

　悩みそうになる妖精を、勇気づけるかのように口にして。
　なるほど、２人は似た者同士なのかもしれない。だからこそ、惹かれあったのだろうか。

　この調子だと、狐は「騙したくなった」だけで理由が成立することは黙っておいた方が良さそうだ。

　どこか遠くを見るような表情で、狐は告げる。
　寂しいだとか、誇らしいだとか、そういう感情の色彩も混じっているが、どこか達観した貌をしていた。
　恐らくは、そういう新鮮な感情はもう湧き起こらないということなのだろう。
　もし彼女の観察力が鋭ければ、狐の表情は「羨望」だと捉えられるかもしれない。
　実際のところ、２人が望む未来に足を踏み出していければいいと、狐は本気で思っているのだった。

厄介な人間が増えて逃げたりとかするのかもしれない。
入れ替わるようにいなくなるエンブリオについてはそんな言葉を。

この世界に棲むものならば当然といえば当然か。
部外者の自分よりもよほど深刻なのは言わずもがな、というやつだろうし。
大変そうだな、と同情にも似た眼差しを送りつつ。

苦笑しつつもそんな言葉を。
世界移動も色々と面倒は多いらしい。

しかしその意志は強い様に思えた。
真っ直ぐな視線に、頑固さを感じ取りつつ。

そんなつぶやきが、ポツリと。