今日も今日とて元の世界に帰還するために通信機器が作動する場所を探す。
周囲に群がる邪魔者を排除しながらも草原をブースターを噴き出させて駆け抜ける。
此処草原は散々と散策したがやはり見付からない。あの忌まわしき水辺や森林内部も探索はしたが見付からず。
何処に行こうとも通信機器は無反応のまま。

こうも見付からないと嫌にもなってくるものだ。
やはり同じ場所を探索し続けるのはリスクがあった。
こうなれば未だに行ってない場所へ。街の中にある城へ向かうのも一つの手だろうか。

追って来るしつこい獣共に銃撃を浴びせながらその場を後にする。
街に辿り着き、城へと向かっている最中に一人。いや一体だろうか。

街を歩く異様な気を纏わせた黒き鎧が視界に入った。
その鎧を纏う者の兜からは赤い点を覗かせている。
そして黒き鎧の節々からは黒い煙が絶えず吹き出しており
忌まわしきアレを思い出させるが、アレなわけがないのだ。彼奴らがこの世界に存在している事は在り得ないのだから。
少し気になり、スキャンを掛け内部を見てみるが、中身には何も存在せずに無人な鎧。
彷徨う鎧と言った所だろうか。
黒き鎧が歩き向かっている方角は、自身と同じ城。

ここで一つ思い付いた事はある。

今迄一人で行動していたが、現状の障害となる邪魔者の強さが日が経つ毎に跳ね上がり
戦闘の激しさは増しているのだ。そろそろ単独行動は難しい。
そこで考えてみた。自分と同じ方角に進んでおり、目的地も同じとなれば彼——いやモノと同行するのもまた良いのではと。
そうと決まれば行動あるのみ。行動をしなければ何も始まらないのだから。

挨拶を交わすためにブースターでの加速をさせて、モノの隣に付けば移動速度を合わせるように歩幅調整をする

口調が悪いのどうしようもない。人間相手ならこの時点で嫌な顔されるが、モノはどうだろうか。

これは驚きだった。まさかモノと称して呼んでた者が本当にモノという名前だったとは。
そして彼は続けて声を紡ぎだす。

モノはどうやら考えているようで、だがその考えは直ぐ様に、答えが下された。

久々の話し相手に仲間が見つかってかテンションが上り声のトーンがあがる。
街の中を2m超の二体の物質が歩くさまは、住人にとっては異質な光景だったに違いない。