私の世界は紅で染まっていた。



今まで色々な人間（そういえば人間じゃないものも居た気がするけれど）と契約してきたが、最終的にはみんな紅にまみれて動かなくなった。


（今回の主様は何人目になるんだっけ……？）

記憶を辿りながら指折り数えていく。

一、二、三、四、……

だが途中で指が足りなくなってしまい、数えるのを止めた。




軽く空を仰ぐ。
青々としていたソレは紅に侵蝕されていっている。




『——お前は主というものをどう思っているのだ……！』

ふと、完全に紅に染まる前の元主様から発せられた言葉が思い出された。
いつの主様かは忘れたけれど多分お堅い性格の人だった気がする。

その時は私が答える前に壊れてしまったため代わりに今答えるなら、

特に、何とも思っていなかった。


少なくとも今までの主様に尊敬の念などを持ったことは無い。
いや、正確には契約する時点では持っていたかもしれない。
だが紅に染まるたびにそれは崩れ去っていった。

それに罪悪感なんてものもなかった。
ただあったのは『また壊れてしまった』という落胆の気持ち。

たった一度戦っただけで壊れてしまうような主様はいらない。
もっと強い人がいい。
私なんて返り討ちにしてしまえるほど、強い主様。



今回の主様はどうだろうか。


この前の戦闘時の様子を思い返すと、期待が勝る。



——ああ、少しは楽しめそうだ。


そう思うと、自然に口角が上がるのを抑えられなかった。

気弱そうな青年を指差しつつ、きっぱり言い切る。

　　ジリジリ

　　ジリジリジリジリジリ

　　ジリジリジリジリジリ　　ジリジリジリジリジリ

そういってから、少し自嘲するように笑って、

遠くを見るように答える。そこには、珍しく何かに思いを馳せるような表情が浮かんでいた。