僕は誰にも今の僕の状態を話していない。

しかしながら、そもそも今まで、
誰にも僕自身について話したことが無かったな、とも思ったのだ。

僕は僕自身について語るものを何も持たず、
僕は僕自身を一番知らない。

それはともに知り合った仲間たちも同じであり、
僕は、仲間のことをよく知らない。
彼らが今までどこで何をして、誰とどうやってどれぐらい暮らしてきたのか、
何を思って今ここにいるのか。

そう言ったことは何も聞いてない。
いつかは帰る予定だったから。

ちょっとしたことで知り合って、
少しの間だけ一緒にいて、
全部終わったらいつの間にかいなくなる。
時間がたてばいつの間にか忘れていく。

そんなつもりだった。

今だってそれでいいはず。
僕らは互いを何も知らない。
だからきっとすぐに忘れる。

僕は永遠にあそこには帰らないけれど、
誰にも気に留められずにどこかに消えなければいけないなら、
彼の言うように今すぐに別の世界にでも行ってしまえばいい。
それで終わり。
わずらわしいことも何もない。

けれどもそこまで考えて、
ふと、どこか寂しいような。

そんな気がしてしまうように、なってしまった。