僕は相変わらず水辺にいる。

偶然にもパンディーさんとまた会うことができ、行動を共にすることとなった。
パンディーさんだけではない。前に僕の武器を作ってくれた赤毛の青年と、彼は初めて見るが、黒髪の青年も一緒だ。
そばがきちゃんの姿は見えなかったけども、聞けばイカをそうめんにしつつそばにしに行ったとかなんとか……？

まだ見ぬイカは彼女にどう調理されてしまうのだろうか。

…おかしい。今僕は一瞬、そばがきちゃんの身の無事ではなくイカの身を案じてしまった。
普通、逆だ。
けど、あの子なら大丈夫だろうと、何とはなしにそう思う。

むしろ心配なのは僕たちの方かも知れないけれど、
何故か僕の方も不思議と不安はない。
一緒に戦い慣れた人がいるという安心感なのかもしれないし、
残る二人の実力を推しはかった結果の故かも知れない。
僕にもこの、「大丈夫」と感じる根拠が何なのかはわからないけれど、きっと大丈夫だ。


ここ数日、人と一緒にいなかった日はない。
沢山の人と出会っては別れ、出会っては別れ。
短い間だったけども色んな人を見てきたと思う。

僕はメルンテーゼがどんなところなのか、まだ詳しくは知らない。
一揆に参加しているのもなんとなく、だ。
それぞれがどんな目的で一揆に参加しているのかも、
何故新たな王がこんなことをするのかも、僕は何も知らない。

それぞれにきっといろんな事情があるんだとは思うけど。
いや、僕の方にも風早に頼まれたというのはあるけれども。
それと、ネクターを確保しないといけないというのはあるのだけれども。

それはどちらかというと僕自身の都合というよりは、致し方なくそうなってしまったところが強い。
だから僕自身にさしたる強い目的や理由はなく、
それまで僕は王が何を思っていたのかだとか、
他の一揆軍がどういう目的を持っているのか、そういったことは考えたことが無かったと思うのだ。

多分きっと、王側にも何か目的があってそれをやっているんだろうし、
一揆軍としても、守りたいものであるとか、今の状況を良いものにしようとしているから、
今この一揆は起こっている。

だからもし、この一揆が終わるとすれば。
それはなんらかの形で今とは違う決着を迎えるということだ。
そして、その後に。僕と風早のこの問題を解決する方法ができたら。
僕はその後、どうなるのだろう。


そういったことについて、ちょっと風早に聞いてみたいことや話したいこともあるのだけれども、
風早はこの前の夢を見て以降、いくら呼びかけても反応がない。
日々同化が進んでいるらしいことを考えると、まさかいなくなったわけではないと思うけども。

…大丈夫だよね？戦闘の方と違って、こっちの方は心配になる。
何も喋ってくれないのは流石に僕も不安だ。

…うん。ああ。そう言ってる場合でもないか。
敵は六。前に見たのとほぼ同じ相手。
ただしその圧倒感が違う。壁のように聳える巨体が三。
その手前には見たこともない相手が一。たった一人で前に立つんだから、かなりのものなんだろう。

うん、悩むのは後だ。
今はまず、全力で目の前の相手に挑もう。

ともかくも、前に進まなければ始まらないのだから。



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んー。なんかやっぱこっちの方にも変化出てきたみたいだな。
こうなると俺もそろそろ身の振り方を考えないといけませんね？
俺もというかまあ自分のと言いますか全体的にと言いますか。

ここ数日で大分現状の理解が追い付いたんだが、
なんか知らねえけどあのエンブリオ…風早な。あいつビビって出てこなくなったんだよな…。

なんつーか勘づかれたのは話が早くて助かるんだけど、
そもそも話の舞台にも上ってこねえんじゃ話にならねえのよ。
しかもそもそも話できても聞いてくれるかが第二の問題ですよ。前途多難ですよ。

まあそのうち逃げてもいられなくなる。
きっと、決断するのは俺でもなく僕でもなく、あいつになるんだろうから。