誰でも、よく見る悪い夢というのはあると思う。
たとえば、怪物に追いかけられる夢だとか、落ちる夢だとか。
あとは……嫌いなものが山盛りの中に放り込まれるなんてのも聞いたことがあるな。


俺は、一人でぽつんと立っている夢を見る。
どこかで見たことがある風景の中。足元に広がる鈍い赤と、淀んだ赤い空。
どこまでもどこまでも同じ景色の中、一人でずっと立っている。


それから、俺はずっとそこで立ったまま、どうしようもなく怖くなっていつも目が覚める。



何が怖いのかは未だにわからないけど、あまり見たい夢ではない。

　「わざわざ他世界に行って帰ってって大変じゃない？」という風に首を傾げた

　女はその声を聞き逃さなかった！

出てきた同行の少女の名に、目を瞬かせながら肯定し。
少しだけ何かを迷うように間を置いてから、あ、と声をあげ。

見せた迷いはどこへやら、嬉々として語る。
止めないと語り続けるのではないか、と思わせる程度には。

経験があるのか、深く頷き。

追求されなかったことに安堵したように、表情を緩めて。

手で払う仕草に、虫でもいたのだろうかと、その辺りに目をやって。

　怪訝そうな顔である。
　背中を押してくれたし、別に教えても良いのだけれど、何となく、こう。釈然としないものがあったり無かったり。

　少しの沈黙が流れる。あまり言わない方が良いことを言ったかもしれない。
　ちら、と彼を窺って、ほの同じタイミングで聞こえた言葉。

　彼のエンブリオについての話を聞けば、大体イメージは湧いたらしい。納得したように頷きを返す。

　十分やんちゃに見えるのに、しみじみと言う様子が何だかおかしくて、くすくすと笑った。

　トーンが落ちた声は、はっきりと聞き取れなかった。きょとんとした様子で、問い返す。

今後を尋ねられると視線が泳ぐ。