銀紫の魔女の言葉を、唐突と思い出す。ああそういえば、随分と可笑しな理由で、ここに来たんだっけ。あの魔女が突拍子もないのは何時ものこと、なんだけれど。
　腕の中のフローロが楽しげに歌を歌う。それに被せて、新しく契約したエンジェル——ラウロも歌う。二人とも最初のうちはおどおどとしていたけれど、すぐに打ち解けたようだ。
　あの奇っ怪な人面ジャガイモとゴブリンはあっさりと倒せ、自分の成長を噛み締めた。

　暫くは穏やかな道が続く。
　だけれど、穏やかなままの訳もなく。立ち塞がるは——キラーウルフと呼ばれる狼。

「あっちにも狼人間っていたけど」
　魔杖を構え、口を開く。
「彼らは良き隣人であったよ」
　遠吠えを聞きながら。不敵に、笑った。

　彼女の口から繰り返される響きには頷きを返す。そして返答を聞いて。
　

　特に落胆の色もなく、一言。むしろ納得の色でそう零して。
　そしてその申し出には、きょとと翡翠を瞬かせた。
　

　まるで予想外だと、自分の目にそう浮かんでいる事にも気付かずに。

ひとりでふらりとしていたところに声をかけられて、それが自分に向けられているものだとは一瞬気づかなかった。
困惑は一時、すぐに穏やかな笑みが浮かんで、友好的に返す。

興味本位で参加した一揆、そこで話しかけてきた初めての人。
男女の判別が付きづらいが、恐らく女だろうとあたりをつけ。

興味半分、優しさ半分といった体で、柔らかく微笑んだ。