道は続く。
　その途上で傷付き、倒れたとしても。

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「やっぱり無茶だったね」

　腕に包帯を巻き直しながら、アムルイが苦笑する。
　包帯の下には薬草を煎じた薬を塗ってあるので、明日には傷も塞がっているだろう。
　そんな彼女の傍らに立つ、甲冑姿の騎士が口を開く。

「命を拾えたのなら、負けてはおりません。
　機を待ち、雪辱を晴らせばよいだけのことです、我が君よ」

　彼——アムルイと契約したエンブリオであるナイトスピリットはそう言った。
　かつては人間の騎士として、幾多の戦場を駆け抜けた亡霊である。
　その言葉が正しければ、まさしく彼の敗北は一度限りだったのだろう。

「それはそうだけど、ちょっとショックなんだよね。
　私も強くなったっていう自信はあったんだもん」

　唇を尖らせ、拗ねるように言うアムルイ。
　ナイトスピリットから見れば、何を馬鹿な、である。
　戦いには相性というものがあり、先日の敗北は相性によるものだ。
　純粋な強さを論じるのであれば、アムルイのそれは既に人の極致と言えよう。
　だから彼は慰めではなく、本心からこう言った。

「我が君よ、全てを斬れる剣など存在しないものです。
　また、無闇に斬れてしまう剣も、それはそれで危なっかしいものです。
　斬るべきものを斬る……それが名剣であり、我が君はまさにそれでしょう」

「負けちゃったのに？」

「敗北とは、傷付き倒れることではありません 。
　そのことに心が折れ、立ち上がれなくなったことを言うのです。
　故に我が君よ。立ち上がれる貴方は、負けてなどいない。
　焦らず己を見詰め直せば、必ずや勝利への道筋が見えることでしょう」

「……そういうトコは本当、流石だよね」

　ふっと相好を崩して微笑み、アムルイは腰を上げた。

「そうだね。反省するのはいいけど、落ち込んだりしてるだけじゃ駄目だ。
　そういう後ろ向きなのは、何より私らしくないもんね」

　そうしてアムルイは、頼りにする騎士へと言う。

「これからも苦労をかけると思うけど、よろしくね」

「御意。我が君が望む道を歩まれる限り、この身を捧げましょう」

　一度の失敗は敗北ではない。
　勝利のために、必要な失敗だったと割り切ればいい。
　全てを糧にして、これからを戦い抜こう。
　最後に勝利を得る、そのために。

木で作られた台に乗って、踊りながら歌っている女の子がいる
１曲歌い終わると、ちらほらいる観客に向かって話しかけ始めた