随分進みはしたものの、目的地まではまだ少し距離があったので、女神の園の探索を一旦切り上げて、山へ向かった。

山へ探索へ行こうと言った時に、

セリーナに理由を聞かれたが、

とだけ答えておいた。

そう言いながら、笑顔で同行してくれた。

山へ向かった理由は、セリーナに言った通りの理由もあるが、一度、水辺を離れて気分を変えたかったという理由もある。

セリーナが自ら選択した事とはいえ、セリーナを守れなかった事。
聖職者でありながら、返り血で顔も服も染めてしまうほどの酷さで敵を斬殺してしまった事。
それらの事を、少しでも忘れたかった。


だから、こうなってしまったのはきっと僕のせいだ。
僕が、事実と向き合わずに目を逸らしてしまったから……。


——————————————————————————————————————

山の獣たちは手強かった。

キラーマンティスは、水辺にいたラッコより少し強い程度で大差はない。
セリーナにとっては危険だが、僕にとってはそうでもない相手だ。

だが、剣で何度も斬りかかってもびくともしないサスカッチの頑強さと、
金属製の鎧すら斬り裂く、ヤマネコの熱を帯びた鋭い爪。

高い火力で殲滅するしかないこの2体は、僕たちにとっては絶望的な相手だった。


僕を軽々と飛び越えて、キラーマンティスがセリーナに素早く何度も斬りかかる。
耐えられるはずもなく、倒れ伏すセリーナ。

倒れ伏す瞬間のセリーナの怯えきった表情。
僕を信じて、自ら倒れる事を選んだ水辺の時とは違う。
今度こそ本当に、僕はセリーナを守れなかった……。


そもそも、今まで一度も山へ行かなかった理由は何だったか？
山の敵は他の場所よりも手強いと聞いていたからだ。
そんな場所へ、他の一揆参加者たちと協力するでもなく二人きりで飛び込む事自体が無茶だったんだ。
そんな事くらい、冷静に考えれば気付けたはずなのに……。


力を溜め、渾身の一撃でキラーマンティスに斬りかかり、一撃のもとに斬り捨てる。

だけど、それも間違いだった。
セリーナを守るためならまだしも、セリーナが倒れた後ならば、連撃を繰り出してきた隙に反撃で斬り捨てればいいキラーマンティスは放置して、ヤマネコか、ヤマネコに届かないならばサスカッチを斬っておくべきだった。

冷静に戦っても勝てるかどうかわからない相手に、今の僕が適うわけもなかった。

何度斬りかかろうとも、びくともしないサスカッチ。
後ろにいるヤマネコを斬りたくとも、こいつの巨体が邪魔でヤマネコまで僕の剣は届かない。

抗う術を持たない僕に待ち受ける結末は、地に倒れ伏す以外になかった。



硬い毛皮に守られたサスカッチを斬り伏せられるほどの、力強い腕が欲しかった。
苛烈な敵の攻撃に耐えられるだけの、頑丈な身体が欲しかった。

必死になって鍛えたところで、僕のこの細い腕と小さすぎる身体では超えられない壁が目の前にある。

父や兄のような、力強い腕に、頑丈な身体……。

　　　△　　土　▲
　　（　㊤　皿　㊤）　　がしゃーん
　　（　　　　　　　　）　　　　　　
　／│　　塊　　│＼　　　　　　　　　がしゃーん
＜　　＼＿＿__／　　＞
　　　　┃　　　┃
　　　　＝　　　＝