──赤。

一面の、赤。


今後こそ、終わりだと思った。
視界が真っ赤に、真っ白に、真っ黒に、染まって
熱と全身の痛みとで、意識が遠のいて…

気がついたら私はまだ生きていて
また、護られたのだと知ったのだった。

命が尽きることなく、魔王の芽が暴走することなく、
今こうしていられるのは、
酒呑童子の力の影響だろうとオルヴァは言った。


──酒呑童子と契約したのは10…何日か前。

「お前さんもいけるクチかよ。力になってやってもいいぜ？」
そう言って、酒臭い息を撒き散らしながら近寄ってきたかと思えば、

「……いい、ツマミがあるじゃねえか」

にやり、と、ぞっとするような笑顔を浮かべ
シアの左肩へ、するっと吸い込まれるように、それは溶け込んだ。

以後、それはずっとシアの中にいる。
話しかけてくるわけでも、意思表示をするわけでもない。

今までだったら、とっくに死んでもおかしくないような戦いが続く中
何度も死を覚悟して、身体が散り散りになるような傷を負って
それでも、敵が去った後、やっぱり私は生きていた。


──死すら覆すほどの力…エンブリオの力を、初めて恐ろしいと感じた。

バルシェさんがエンブリオの力を「副作用」と言っていた意味も
今なら理解できる気がする。

一方、引っかかることがあった。
「ツマミ」と、酒呑童子は言った。恐らく「魔王の芽」のことだ。


──獄炎の幻を引きずったまま、赤にまみれた世界でそんなことを考えていた。


………

ItemNo.7 とんでもない箱 を開けました！
　　　宝箱から 魔槍マッソーヴェノム を獲得！