各々が寝室に戻り、明日に備えて眠りについた——ハズだったのだが、その翌日。

ローバルが飛び退いたのとほぼ同時にボウガンを抜いたのは反射的な行為だった。

そのまま流れるように弦状の撃鉄を起こして狙いを定め———

———その切先を、下に向けて逸らした。

食物連鎖において、自分より上位である動物の反応ではない。
むしろ草食動物のそれに近い反応であると言ってもいい。

報告にあった知能を持ったローバルならば、そのような行動を取ってもおかしくは無い。
しかし目の前にいる”天敵”であり”同胞”である者の行動を冷静に振り返ってみると、腑に落ちない点がある。

"怪傑Xのエンブリオ"として生み出されたサイネル……X-13はローバルにとって、言ってしまえば"餌"である。
ローバルも混入しているので幼体、ヒトガタ相手には紛れ込めたが、それでも成体相手には誤魔化せなかった。

奇妙な声のウワサはあったものの、この近辺での被害件数はゼロである。
目の前のローバルはここではないどこかで成体になったにせよ、食事目的ではないのではないか。

……無論、自分を騙そうとしている可能性も否定は出来ない。しかしサイネルには、そうは思えなかった。

仮面のような目元から覗く、逃げもせずにこちらを見据える真っ直ぐな瞳。
それがどうしても…彼、あるいは彼女を敵と見做すのを躊躇わせた。

青年はボウガンの口を、ゆっくりと上げていく。
そして、ローバルに問いかけた。

つまり、身振り手振りで表現しろという事なのだろう。
人間の言葉を解するローバルはいたが、目の前のローバルがそうであるかは定かではない。

もしも青年の言葉を聞き取れたなら、このような問答がいくつか繰り広げられるだろう。
そんな問答の最中、青年はフェアリードライバーそっくりの装置……DFDを取り出した。

どうやら未来人にはタッパーは初見だったらしい

そういうもんだいじゃない

未来人難しい

閑話休題

ローバルの目撃情報を頼りに、シュウスケを探しにローバルの目撃情報があった森へと足を踏み入れていく—

しかしなかなか引き下がらない様子のフィリアス。
おそらく異性だとかそういうのも気にしてなさそうなくらいのアレだろうとは思うが…。

たぶん大丈夫、たぶん大丈夫…。