シフォン「・・・ふぁあーっ！！」

間の抜けた声が天幕から聞こえた。クレッシェンドに。
朝から何やらうんうんうなっていたようではあったが。

ほどなく、シフォンが寝間着のままふらふらと出てくる。
「ちょっと田んぼの様子を見に…」とか言いつつ朝から外で柔軟をしていたマリーは、少ししょんぼりしているシフォンに声をかけた。

マリー「おはよー。どしたの？」
シフォン「あのね。お気に入りの服が破れちゃった・・・。」
マリー「あー。支給品じゃないのって破れるよねー。」

マリーは本来アークス、らしくその不思議世界の不思議技術で作成された服は真に都合がよくできており、簡単に破損しないらしい。

マリー「まー、そういうことなら、ミドリちゃんがいいんじゃない？」
シフォン「そうなんですけどぉ・・・。」
マリー「・・・うん？」

目をそらし、もじもじ歯切れの悪いシフォンの続きの言葉を待つ。

シフォン「ちょ、ちょっとはずかしい・・・。」
マリー「・・・ああ。」

マリーはなんとなく、納得した。

マリー「(´・ω・｀)出荷よー。」
シフォン「・・・はぅっ。」
マリー「さすがにねー　あれだけ甘いもの食べて太らないほうがおかしいと思うよー？　というか、シフォンはそれでも細身だとおもうけど。」

ごく一部を除いて、だが。

シフォン「ううぅ・・・」
マリー「ま、お気に入りならやっぱミドリちゃんがいいよ。ほら。ついていってあげるからさ。」
シフォン「・・・うん。わかった。マリー、ありがとお。」

覚悟を決めたように、シフォンは小さく頷いた。


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仕事熱心なのか、趣味なのか、ミドリは早朝から木陰でロッキングチェアに座り、手元の作品の完成に精を出していた。
テーブルの上にはさまざまな道具が並べられている。
もともとは和装のみだったのかもしれないが、ここに来て、いろいろな人の服を繕ううちに和洋両方いけるようになったらしい。

マリー「みどりちゃんおはよー。」
シフォン「お、おはようございましゅ。」
ミドリ「おはよう。」
マリー「いやー、ミドリちゃんにお願いがあってー。ほら、シフォン。」
シフォン「ぅぅぁあ・・・や、やっぱりいいれす・・・。」
ミドリ「？？」
マリー「ああもう。こーらー。まったく。あのねー、シフォンがおきにの服破れちゃったらしくてさ、なおしてほしいのよー。」
ミドリ「ああ、そういうことね。みせて？」
シフォン「あ、あのっ、なんだかなおったきがしますのでだいじょうぶですっ。」
マリー「いや、なおってない。絶対ウソでしょ。そんなちょっと太ったくらいでそこまで恥ずかしがらなくても・・・」
シフォン「ぁぅぁぅ・・・」
ミドリ「うん。シフォンちゃんだって、たぶんまだせいちょうきなんだろうし、そういうこともあるんじゃないかな、ほら、だして。」
シフォン「せ、成長期はもうおわったはずで・・・うぅううぅ・・・。」


頬を紅潮させ、瞳を潤ませ、口を真一文字に結んで抵抗していたシフォンだが、やがて諦めたように耳をたれて、ソレを差し出した。

マリー「なん・・・だと・・・。」
ミドリ「・・・。」
マリー「太った・・・って、シフォン・・・え？」
シフォン「だ、だからいやだったんですよぉ・・・。」
ミドリ「せいちょうき。」
シフォン「もうヤだよぉ・・・。」

涙目で机につっぷしてしまった。

マリー「いやいや、普通は喜ぶものじゃないの？ほら、私ももう少しはあった方がいいかなー？なんて？」
ミドリ「うん。大きいのにかたちきれいだし、しょうじきちょっとうらやましい、とおもう。」
シフォン「もうこんなにいらないです・・・身長のほうがほしいです・・・。」

平均なんてわがままは言わない。だが。せめて150㎝・・・。

マリー「ま、まあ需要的には大きいほうがあると思うし！」
シフォン「わたしの種族は、別に男の人誘惑しないですよっ」
マリー「えっ。」


ではその二つのたわわに実ったものは何のために。

シフォン「えっと、、、人系種族にデータを落とし込んだ場合、わたしはけっこー高性能だって聞いたことはあります。えへへ。」

それは主に胸の評価の間違いではないだろうか。
色々な種族と出会う機会のあるシフォンにとっては、高性能である、ということは大切であり、それもあってこういう立場にいるらしいが・・・。
たしかに、スタイルを含み、性格なども申し分はないだろう。
あと、性能、という表現はどういった意味をふくんだものなのだろうか。
シフォン本人はあまりわかってなさそうである。

シフォン「それに、わたし、そんなに男の人得意じゃないですし、そもそも種族としても、そういう必要はないですし・・・。」
マリー「えっ。得意じゃないの？」
シフォン「だ、だって・・・ときどきすごく胸ばかりみてくるひととかいるし・・・視線がなんかえっちぃし、恥ずかしいし・・・。」

それは衣装のせいもあるのでは・・・
歌もダンスも得意だそうだが、案外アイドルとかは向かないのかもしれない。
本人いわく、あこがれはあるけど絶対無理！だそうだ。もっとも、シフォンが述べた理由は「じぶんはそんなにかわいくないです」という、マリーがいま感じているものとは別だったが。

マリー「あー、ちなみに、ね？普段の衣装はいったい、どういう基準で選んでるか教えてもらっていいかな？」

あのやたらひらひらしたやたら露出の高いやたら破廉恥なやたら胸を強調するような服である。

シフォン「？　えっと、せっかくなので、かわいいふくをきたいじゃないですかー。」

ああ、そうか。シフォンの感覚ではアレがかわいいらしい。なるほど、高性能。無意識に選んでしまうあたりが高性能なんだきっと。

マリー「ああ、そう・・・なるほど・・・うん。まあ確かに似合ってるからかわいいとはおもう。」
ミドリ「おもう。」

それ以上にえろいことはふせておこう。

ミドリ「えっと、とりあえず、わたしの、ふりーさいず、だから、つかっとく？」
シフォン「ふりーさいずのってあるんですかっ。いいないいな。かわいいといいな。」
ミドリ「いやあのえっと・・・。」

サラシ。

シフォン「うぐ・・・以前、和服着たいと言ったら、クレハさんにそれを巻かれた悪夢が・・・。」
マリー「おもっきりつぶされたのね・・・」
シフォン「いたいしきついしくるしいしあついし・・・。」
ミドリ「うん。そのサイズだとそうかも。あ、でもさいきん、わふくもむねの大きい人ようのデザインもふえたみたい。」
シフォン「わぁっ。そうなんですねー。えへへ。」
マリー「・・・はっ。ミドリちゃん、さらしでつぶしてるってことは隠れきょにゅ・・・」
ミドリ「いや、ふつうだからね？」
マリー「お、おう。」
ミドリ「うん。まあ・・・とりあえずその、したぎ？ぶらじゃあ？しゅうりするね。」
シフォン「あ。おねがいしますね。おきになんですっ。なかなかかわいいのなくて・・・。」
マリー「まあそのサイズだとなー・・・」

F-60

マリー「なん・・・だと・・・。」
シフォン「にかいめっ！？」
マリー「シフォンがスニーク撃つときに頭の位置が高い理由がわかったわ・・・。」

うつ伏せになれない。

シフォン「ううぅ・・・。」

ミドリ「・・・。（というか、このサイズでこわれるということは・・・）」
ミドリ「とりあえず、さいすんしなおしたほうがいいとおもうよ？」
シフォン「！？　そ、そのままでいいですっ。きっと金属ひろーとか、そういうのですからっ。」
マリー「ははぁーん？」

マリーがにやにや。手をわきわき。

マリー「まぁまぁ、せっかくプロが作ってくれるんだし？とくちゅーでサイズのきっちりあったものをだね？」
シフォン「あってます！いまのであってますからっ！」
マリー「いやいや、自分にあってて、しかもお店で買えないようなかわいいアレンジ加えてもらえるんよ？」
シフォン「ふみゃぁ・・・。それいいかも・・・ｖ」
マリー「すきありっ（がばぁっ」
シフォン「ひいぅっ！？」

—20秒後

シフォン「///」くてぇ
マリー「やだ・・・シフォンの耐性、低すぎ・・・？」
ミドリ「こ、こうせいのう・・・？」

間違った意味で高性能なのかもしれないが・・・。
そもそも異世界が異世界の判断基準を誤ることなんてよくある話なのだろう。
いや、ある意味高性能なのかもしれないが、いろいろおかしい。何を基準に採点パラメータを決めたのか。

ミドリ「えっと・・・サイズ、わかったのかな・・・。」
マリー「やわらかかったよ？」
ミドリ「わからなかったんだね・・・。」
マリー「もんだら指がうまるような感じ？」
ミドリ「うま・・・お、大きいことしかわからないよ・・・。」

なんとなく自分の胸に手を当て赤面するミドリ。

マリー「メジャーとかないし。」
シフォン「うう、もまれぞんだよぉ・・・。」
マリー「じゃ、ミドリちゃんにメジャーをかりて改めてだね。」
シフォン「ひぅっ。もういいですっ。いまのであってますからっ。」
ミドリ「えっと・・・じゃあ、ほんのきもちだけ、大きめにしておくね？」

ミドリは気遣いのできるよい子である。

シフォン「あぅ、えっと、はい・・・。」
ミドリ「（けっこーよゆうもたせたほうがいいかな・・・）じゃあ、あすまでになおしておくね。」
シフォン「ありがとうございますー。」


・・・・・・。

シフォンは今日はブラのいらない衣装にする、とのことで一旦天幕へ着替えをとりに。
ブラのいらない服ってなんだ。あの下乳でてるようなやつか。
シフォンにとってブラというものは衣装のアクセサリの一部にしか過ぎないのかもしれない。よくわからん。
正誤いろいろな知識が混ざり合っている気がする。そしてそれを受けているとこうなってしまうのかもしれない。おそろしや。


ミドリ「うーん・・・」
マリー「でけー。」

下着を空にかざしてみる。うむ。でかい。

マリー「うわー、下方の視界狭っ。」

今度はあててみる。

ミドリ「きもち、っていったけど、どれくらい大きくしてあげよう？」
マリー「5サイズくらい？」
ミドリ「それはちょっとやりすぎだし、さすがにそれはないとおもうよ・・・。」
マリー「じょーだんじょーだん。」
ミドリ「あんだーを１、とっぷを２？」
マリー「２さいずもあげちゃうの！？」
マリー「えふ、じー、えっち・・・もう、ミドリちゃんのエッチ！」
ミドリ「・・・（じと。」
マリー「じょ、じょーだんじょーだん。しふぉんがえっちなだけだよね。うんうん。」
ミドリ「ま、まあ、とっぷだけ２さいずあげちゃうとあからさまだし、ぜんたいてきにおおきめにしといたよーって、いえるしね。
マリー「あのこ簡単に騙されてくれそうよね・・・。」

いやまったく。ほんとになにが高性能だったのだろうか。