くらい………


気付くと暗闇だけが広がっていた。
ここは何処なんだろう。
何故こんな所に居るんだろう。
記憶の糸を手繰ってみようとするが、
ぼんやりとした眠気が邪魔をしてうまく頭が働かない。


さむい………


どうしてこんなに寒いんだろう。
吹き付ける風の冷たさではなく、
朝方の凍りつきそうな冷気でもなく。
ただ、じんわりと身体を支配する寒気。

その寒さがとにかく不快で体をさすろうとして、
身体が動かないことに気付いた。
身震い一つとることができず、当然首をかしげる事もできない。

私は一体どうしてしまったのだろう。
これからどうなってしまうのだろう。
しかしぼんやりとした眠気が頭を覆う。


くらい……さむい………ねむい………


眠ってしまいたかった。
しかし、このまま眠ったらどうなってしまうのだろう。
そんな恐怖感が芽生え始め、眠ることができなくなる。


ねむい………眠りたくない………

ねむい………やだ、眠りたくない………

ねむい………眠りたく……………………………


『目覚めよ』


不意に、誰かの声が聞こえた。
ぼんやりとした意識の中でその声だけは妙にはっきりと聞こえ、
その声にすがるように意識を向ける。

『目覚めよ』

そうだ……眠りたくない……

しかし、その願いとは裏腹に眠気が急に強くなる。

いやだ……眠りたくないのに……

意識が遠のくような感覚と、
身体がどこかに沈んでいくような感覚。


『目覚めよ』


声が……さっきより遠のいた。

いやだ……眠りたくない…………

焦って手を伸ばそうとするが、やはり身体は動かない。

いやだ……いやだ………


『目覚めよ』


声が遠のく。
眠気が強くなる。
身体が、ほの暗い暗闇の底に引っ張られて沈んでいくようで、

いやだ……………


……………


声が…聞こえない。

いやだ………眠りたく……………………

意識が途切れれかけたその時、
別の声が響いた。

先程とは違い、うすぼんやりとしてはっきりとは聞こえない。

すがるようにその声を聴いていたが、
眠気が容赦なく私を引きずり込む。

やがてその声すらも聞こえなくなる。
もはやほとんど残っていない意識で繰り返し…
祈るように……
いやだ………
ねむりたくない…………
ねむりたくない……………

そして、光がはじけた。

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