占い師は一頻り笑うと傍にあった灰皿にタバコを押し付けて火を消した。

「立ち話もなんだ、どうぞ座ってくれや、お客様」

そう促され、私と兄さんは顔を見合わせると大人しく椅子に腰掛ける。

「それで？何を占って欲しい？」

「えーっと……」

兄さんが言いにくそうに口ごもる。
何を占って欲しい、と言われて私達は簡単に答えられない。
私達の間に起きている時間のズレはあまり公言するのは憚れる。
あまりに局所的な現象だが、事態の重大性は高い。それが無用に広がるのはまずいと思う。

「何だ、言いにくいことか？」

まさかホントに愛の逃避行とかか？と言われキッと睨むと彼は肩をすくめる。悪びれている様子はない。
個人的にだが彼には言えない。あっさり漏れて大騒ぎになるのも困る。
アーネも目立つのは避けたいようだし、私達も世間を騒がせたくない。

「いや、何と言うか何を……と言われるとうまく言えないというか」

「はあ？なんだそりゃ。何だか解んねぇのに此処に来たのか？」

それってどうなんだ、お前ら。
視線がそう訴えて来て、私は非常に居心地の悪い気持ちになる。
確かに此処に来たのは何か手掛かりでも掴めたら、という非常に曖昧な理由だ。
何しに来たのか、と思われても仕方ない。

しかし、彼は怒るわけでもなく、逆ににやりと笑った。

「まあ、言いたくねぇ秘密だってあるわな。何処に耳や目があるかも分からんし。秘密厳守はこの商売では絶対だからな」

そう言いながら彼はテーブルの上にあった小さな木箱を開ける。
そこにはタロットカードが収められていた。