「この世界、二階堂の人間が多過ぎじゃないですか？」

出会った内の大半が学園関係者と言うのは出来過ぎている感じがする。社交的ではない自分には、共通の話題があるだけで何かと助かってはいるのだが。

宿を出て当てもなく歩いていたら鉢合わせた、目の前のやや成育不良気味の少女も学園の生徒だ。学園では会話こそしたことはなかったが、その目立つ容姿と若干変わった行動は印象深いものがあった。

そして今だからこそ解るが、彼女は人間よりも“彼”に近い存在のようだ。それも、中途半端な自分とは違って“本物”の。

「みんな居なくなってしまいまして。よかったらご一緒しませんか？」

私がそう提案すると彼女はじっとこちらを見つめてきた。その顔には若干の困惑が浮かんでいるようにも取れる。突然の申し出に戸惑ったのか、あるいは私の在り方が変わりつつあることに気が付いたのかも知れない。
しかしその困惑の色は直ぐに隠れ、彼女は私の提案に肯定の意を表してくれた。

「似た者同士、仲よくしてくださいね」

私の言葉に彼女が若干残念そうな表情をしたのは、見間違いだったのだろうか。