うろうろと教会の中を探し歩いていたけど、どうにも見当たらなかったので食堂で読書していたブリギッタに声をかけた。

ブリギッタが私の顔と、手に持ったままの雑巾を見てちょっと笑う。

普段は、そんなことしないのよ。普段は・・・。
わたしは掃除道具を片付けながら、最近はちょっと真面目にやってた掃除の結果を見上げる。
何があったというわけでもないのだけれど、最近は戦いに出かけることが多くなってみんなに任せっぱなしで
いつもみたいにサボってると申し訳ない気持ちになっちゃうからね。たまに戻ってる時ぐらいはって。
別に、お掃除とか嫌いなわけじゃないの。こうして綺麗になった窓を見るとやっぱり気持ちが良いわね。

「マリア様に褒めてもらいたかったんだけどな」
普段は猫を被っている子供っぽい部分がうっかり顔を出す。
ほんと、どうしちゃったんだろう。マリア様が居ないから・・よね？きっと。

さっき掃除の終わった2階の窓から、馬車に荷物を積んでる様子が見える。

別に、決まり事があるわけじゃないけど、シスター・マリアとリヴァランが同時に出かけることはあんまり無いんだけどな。

何かイヤな予感がしたので、ラスニールを取りに急いで部屋に戻る。

部屋からいつものリュックサックと、ラスニールを持ち出すと中庭の物陰に滑りこんで、馬車の様子をうかがう。
馬がまだ繋がられてない。これならなんとか潜り込めるかな？
あたりを見回しても、リヴァランがすぐに戻って来そうな様子でもない。
わたしは、ひとつ大きく深呼吸をすると隠形の呪文をとなえる。

姿を周りと同化させる幻覚の魔法だけど、リヴァランも、まさかわたしが着いてくるとは思ってないだろうから、きっと大丈夫。
この前ここに潜り込んだ時は、うっかり途中でばれちゃったけどあれからまだ1月もたって無いんだよね。


馬車の中でしばらく息を潜めているとリヴァランが馬を連れて戻ってきたらしい音がしたので、
わたしは荷台の隅で小さくなって隠れます。

どさりと荷台に無造作に袋がほうり込まれると、急いでいるらしく馬を手早くくくりつけると馬車が動き出しました。

今度こそ、見つからないようにとぎゅっと身を小さくしているのでした。