「……クゥロウ。」


何でだろう、と。
それが最初に聞いた時の感想だった。


「独りである彼が、教えてくれた名前……。」


ごろん、とベッドの上で寝返りをうつ。
いや、いやいや。

言って、自分で否定しながら枕に顔を埋める。


別に独りなんかじゃないって。カミユ君もいるし、なんだかそれなりに他の方面にも顔は効いているみたいだし。
きっと、ちゃんとした”お相手”の一人や二人————



「…………うーん。」


どんな、人だろう。
次に浮かんだのは、興味と疑問。

クゥロウと名づけた人は。
クゥロウであると教えた人は
もしも、もしかしているとするクゥロウと名前を呼ぶ————


「————って、何を考えてるんだろ……わたし……。」


疲れている、んだろうか。
次の休み、次の休みにくぅｒ、グレイマンさんの使っていた店に向かう。


「あー……その前に整理とかしなきゃ。」

倉庫や予備の貸し倉庫に入れてある品物なども、そろそろ整理して目録に直さないと
いざという時に直ぐに取り出すことができなくなってしまう。



「————————そうそう、考えるのなんて後々。」





まぁ、今はこんな感じでいいだろう。
きっと。

馬車に近づき、飛び乗る。

追撃は無い。気配も、近くには感じない。

シュウスケがフェアリードライバーから紫の宝玉を取り出すと、強化外骨格は光に包まれ、消えて行った。

あれが、以前彼女の言っていた賊なのだろうか。

次に会った時、果たして自分は再び退ける事が出来るのだろうか。

様々な思考を巡らせながら、シュウスケは沈みゆく夕日を見つめていた。

それでいいのか？　いやよくないだろう（反語）

ぐったりしている。よほど最近ハードスケジュールなようだ。

無言で煙草を地面に落として踏み消した。

戸惑いを引き摺るように左右に首をおおきく揺らしながら、竜はゆっくり、歩みを進める‥

薄っすらと血の付いた得物を振り払う……。

竜は再び、首を巡らせる。——不安げに数度周囲をきょろきょろと見回して、駆けて、駆け去っていった。