--- 8日目
昨日インコと遭遇した頃には既にそうだったのだが、ネルケがいない。
先日キノコの最終をしている頃に、いつの間にか姿が見えなくなっていたが、その時はまずインコとの決着を優先していたため、まだ探すことすらしていない有り様だった。
ともあれ、経緯は不明だがどうやら砂地にいるという情報を掴んだため、一端の目的地として砂地を攻めることとなった。
加えて、面白い話を耳にした。砂地には小型のドラゴンが出現するらしい。
砂地というおよそ私が足を踏み入れたことのない環境。そこに、この世界のドラゴンが居るという。
砂地のドラゴン。目先の欲に囚われてしまっている、未知の環境とそこに待つ者には好奇心をくすぐられる。
とても楽しみだ。

***

あつい。
ここはとてもあつい！
アレほど期待しておいて早々、このような弱音を吐くのはいかがなものかと思うが、あついものはあつい。仕方がない。
この砂地という場所は、夜になれば気温が下がるため良いのだが、日の出ている間は相当に過酷だ。
ましてやこちらは毛皮に身を包んでいる。日中帯は、本当につらい。
早々にドラゴンに会いたいものだ。この過酷な環境で生きているのだから、もし仲間に引き入れることができたならさぞかし頼り甲斐もあるだろう。
それだけが楽しみだ。

---- 9日目

あつい。ここはほんとうにあつい。
残念ながら、ミニドラゴンの姿は全く見えない。ネルケは見つかったが。
何やら鉄か何かの容器入れが襲ってきたが、特別苦しめられることもなく対処できた。
缶の相手については、そのまま潰して捨ておこうかとも考えたが、あるいは何かしら助けになるやも知れぬと考え、一旦は保留し潰して携帯可能になった彼を連れ歩くこととした。万が一の時は、食料にもなるだろう。

しかしあつい。本当にあつい。
ドラゴンはいないのだろうか。

--- 10日め
今日もドラゴンはいない。
情けない話だが、これ以上の砂地への滞在は厳しい。
ドラゴンとの遭遇は諦めざるを得ないだろう。それ以上に、パーティの皆が私含めグロッキーな状態だ。
悔しい一方で、もうあの日照りと戦わなくても良いというのが嬉しくてたまらない。
あつい。ほんとうにあつい。次は草原に行くという。風で涼しみたい。

一瞬身構えたことに気づいてか、フイユの態度を気にする。

フイユモーヴの言葉に淡い微笑で短く返す。
こんな騒動の最中、見知らぬ他者を気付かえるその精神に無言で感謝の意を示しつつ。

ポツリと感慨深げに呟く青年。
そういう感情の動きは、自分自身にも覚えがあるので想像は容易い。

それは決して、望んではいけないことではないはずだ。
少なくとも、今までそうして生きてこられたのならば。

そんな意味を含んだ言の葉の意味は正しく彼女に伝わったのかどうか。
敢えて聞くほど無粋ではない。

と、そこにきての思わぬ発言に耳をぴくりと立てる。

そう見えるもんかね……、とぼやきつつ。
ポリポリと頬を掻くのであった。

妖精さんズに陣形を指示しつつ、刀を構えた。