セシルがいない。


今まで追いかけてきた足あとがぷっつりと消えた。
消えた場所へ到達してみたが・・・あいつの姿はなかった。残されたのは・・・アイテム袋。
まるっきりあいつだけいなくなったかのようだ。

「・・・いや、・・・」

装備が、一式ない。

嫌な予感がしてたった一つの心当たりまで走った。









ダンッ、ダンッ、ダンッ

「くっそ、ひらかねぇ・・・」

心当たりは祭壇しかなかった。

そこにはもうすでに強固な封印が施され、敷地内にすらはいれない。
自分の力と相手の強さの差を思い知らされたようだ。
手が上がらなくなるまで叩き続けた。




どれだけ時間が経っただろう。
ザ、ザ、と砂を踏む音で顔を上げた。

もう封印はない。目の前には見たことのある靴。

ヤツだ。

喉はカラカラだ。それでもなんとか口を開いた。

「き・・・あ、セシルは・・・」

ゆっくりと、顔を上げる。
血が見える。

〘そら、これだ。〙

嬉々とした声色でヤツが俺の前に何かを投げた。
目の前にきたソレは

茶色の

ふわふわとした

けど血もついて

どうみてもうさぎの耳で

ソレ以外に何もなくて。

とてもよく見知った

あの、アンバーの色をした・・・

セシルの兎耳。

〘お陰で滞りなく完了したよ？次は狼の番だ。狼とおいかけっこは楽しそうだなァ・・〙

「・・・ぁ、ぁぁ・・・ぁ、・・・」

狼は動かない。
研ぎ澄まされた刃が男の懐から引き抜かれる。
絶望に打ちひしがれた狼の首へと
男の刃が煌めいた。